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一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

洗脳された日本原住民【その4】~宣撫の基本型その1/対話形式の一方的命令~

前回の記事『洗脳された日本原住民【その3】~プレスコードの下で「自由」に動く猿回しの猿だった日本人~』の続き。

ある異常体験者の偏見 (文春文庫)ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
(1988/08)
山本 七平

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前回の続き)

「占領統治・宣撫工作」の基本図式は、日本軍がやろうと米軍がやろうと同じことである。

まず「民衆はわれわれの敵ではない」と宣言する。
何しろ「一億玉砕」とか「徹底抗戦」とかいうスローガンを掲げて、竹槍まで持ち出していたのだから、どんな復讐をうけるかと思っていたところに、こういわれるとホッとする。

一方占領軍は民衆の散発的抵抗という、最もいやな問題に直面しないですむ
そこで「占領軍は民衆の味方であり保護者である」と宣言する。

ついで「お前たちをこのように苦しめた一握りの軍国圭義者はわれわれの手で処罰する」という。
今の新聞人の中にも、軍報道班員として南方に行き、ちょっと表現を加えればこれと全く同じことを「原住民」に言っていた人がいるはずである。

このヴェテランたちが今度は「占領地日本の原住民」に同じことを言っている――これが「日本人がみんなフィリピン人に見えた」理由であろう。

そしてこの宣撫班的体質は、おそらく昭和五年か十年ぐらいから延々とつづいているのであろうから一朝一夕になくなるはずはない。

従ってその後輩である本多氏や新井氏(註)に「一握りの軍国者……」とか「民衆と帝国主義者を分けることを知っている」とかいう宣撫用語が生のまま出て来ても、驚くにはあたらない。
(註)…本多氏とは本多勝一(wiki参照)、新井氏とは毎日新聞論説委員だった新井宝雄氏のこと。

だが、この問題で他人ばかり批判するのはいささか片手落ちであろう。
というのは私自身この言葉をロにしたからである。

私は宣撫班員ではないが、比島は本間司令官以来「一人一人が宣撫班員であれ」という最高方針があり、また対住民折衡のいわば「渉外係」として原住民と接触するという立場になると、否応なしにこういう姿勢にならざるを得なくなるのである。

従ってこの行き方は軍政なるものに必然的に付随するようにも思う。
第一「お前は敵ではない」と宣言しなければ「対話」はできない。

では敵でないなら、なぜこの国へ侵入してきたのかとか、なぜわれわれに干渉するのか、となると

それは、百年にわたり東亜を侵略した米英帝国主義者からアジアを解放するためで、従ってお前は私の味方であって、米帝国主義者や一握りのその手先は日比共同の敵である。従ってその敵と戦うためお前たちの協力を求める

という言い方しか出来なくなるのである。

相手はその言葉をどこまで本気で聞いたかわからないが、一応「うけたまわって」おけば、何しろ敵ではないと言われたのだから、自分が安全なことは確かである。
何しろ相手は武器をもっているから反論はできない

そして本当の反論は、武器には武器という形になるであろう。

従ってこれは対話のように見えるが、実はきわめて一方的な宣言にすぎず、「占領軍の命令指示に従え、そうすれば生命財産は保証する。ただし敵対するなら射殺するぞ」という一方的な命令を、「対話」の形式でいっているにすぎないのである。

これが宣撫なるものの基本型であり、以上の台詞がその原則の一である。

この点ではマックもマック宣撫班もまたある面では北京も同じで、その差は私という一個人が口で言った原則を、新聞・放送を通じて複雑な表現で言っただけであり、達うのはただ伝達の手段と表現だけであって、伝達する内容は結局は同じことにすぎない。

そしてそうするのは、それが占領軍にとって有利だからだ、という理由だけである。

(次回へ続く)

【引用元:ある異常体験者の偏見/洗脳された日本原住民/P228~】


日本人はとにかく「対話」が好きですから、敗戦のショックを和らげるというかごまかすというか一種のストックホルム症候群(註)のように、占領軍の一方的命令(対話)を受け入れたのではないでしょうか。

(註)…ストックホルム症候群については下記拙記事↓参照されたし。
◆「自己欺瞞」と「精神分裂病/ストックホルム症候群」
◆平和主義の欺瞞【その1】~日本人の平和主義は「強姦された女の論理」~


アメリカ軍の占領が上手くいった背景には、日本人の対話至上主義というモノが作用していたのではないか…なんてちょっと思ってしまいますねぇ。

さて、次回は宣撫の基本型その2、分割統治について書かれた箇所をご紹介していきます。ではまた。

【関連記事】
◆洗脳された日本原住民【その1】~宣撫工作に利用された「日本国憲法」~
◆洗脳された日本原住民【その2】~日本人がフィリピン人のように見えた理由とは~
◆洗脳された日本原住民【その3】~プレスコードの下で「自由」に動く猿回しの猿だった日本人~


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洗脳された日本原住民【その3】~プレスコードの下で「自由」に動く猿回しの猿だった日本人~

前回の記事『洗脳された日本原住民【その2】~日本人がフィリピン人のように見えた理由とは~』の続き。

ある異常体験者の偏見 (文春文庫)ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
(1988/08)
山本 七平

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前回の続き)

この方法を言語論から見て行くと非常に興味深い。
パウル=ロナイ教授が『バベルヘの挑戦』の中で、言葉には「伝達能力」があると同時に「隠蔽能力」があることを指摘している。

あることを知らせないために百万言を語るこれも宣撫工作の原則の一つだが)という最近の一例をあげれば「林彪事件(wiki参照)」の報道であろう。

すなわち「林彪事件の真相」を知らせないために多くの報道がなされた。

これは少しも珍しいことでなく、戦争中もプレスコード時代も絶えず行われていたことで、現在では外電との対比が可能で外国の新聞も買えるから、その報道の真実性に人びとが疑問をもつだけで、情報源を限定してしまえば、「報道することによって、事実を隠蔽する」ことは、実に簡単にできるのである。

従って情報の根元を統一して一定の枠を設け、その中で「言論」を自由にしておくということは、プレスコードというマックの網とタイコの下で「自由」に動いている猿まわしの猿と同じ状態にすぎないわけである。

占領下の言論統制やプレスコードの実態は不思議なほど一般に知られていない

マスコミ関係者はこの問題をとりあげると、必ず、例外的な犠牲者を表面に立て、自分はその陰にかくれて、自分たちは被害者であったという顔をする

それは虚偽である

本当の被害者は、弾圧されてつぶされた者である。

存続し営業し、かつ宣撫班の役割を演じたのみならず、それによって逆に事業を拡張した者は、軍部と結託した戦時利得者でありかつ戦後利得者であって、「虚報」戦意高揚記事という恐るべき害毒をまき散らし、語ることによって隠蔽するという言葉の機能を百パーセント駆使して「戦争の実態」を隠蔽し、正しい情報は何一つ提供せず、国民にすべてを誤認させたという点では、軍部と同様の、また時にはそれ以上の加害者である

占領下の言論統制やプレスコードという問題になると、この点の究明は避けるわけにはいかないが、細かい点は別の機会に譲るとして、多くの出版人が言ったように「プレスコードのしめつけは東条時代よりひどかった」のは事実であろう。

この点、内務省や軍部の統制には、表むきは実にきつく、つまらぬことまでうるさく干渉するくせに、どこか幼稚なところがあった。
××は×××である」で本が出せた時代などは、ソヴィエトや中国の言論統制と比較すれば、幼稚を通り越した間抜けであろう。

戦時中は非常にきびしくなったとはいえ、やはり、こういった間抜けがあった。
戦前の伝説的ベストセラー『小島の春』の出版社故長崎次郎氏からは、いろいろな教えをうけたが、以上の点で非常に面白い話をきいた。

戦争中『小島の春』は実質的には発禁であった。
再版したくても紙を配給してくれないので出版できない。
今この本を読んても、軍部がなぜこの本を発禁にしたか、だれにも理解できないであろう。
どこを探しても軍部批判も戦争非難もあるわけではない。

従って一種の感情的な「毛嫌い」とでもいう以外にないが、当時日赤の名誉総裁であった貞明皇后がこの本の愛読者で、「何とか再版できぬか」といろいろと骨を折られたが、それでも軍部が頑として拒否し、紙を配給せず、従ってどうしても出版できない。

軍部にも戦争にも直接には何の関係もない愛生園(癩病院)の一ルポにも、これほど神経質なのだから、当時のマスコミが、軍部の一顰一笑にまで神経質に迎合しただけでなく、その結論をわれ勝ちに先取りして競争して掲載したとしても不思議ではない。

しかしこれだけ統制しながら、抜けた点もある。
というのは、『小島の春』は少部数だが再版できたのである。

それは当時の岩波書店の支配人堤常氏が、手持ちの統制外の和紙を長崎書店にまわしたからである。
これは一つの美談であろう。

しかしその背後にあるものは、軍部に迎合すれば多量の紙を配給されて大出版社たり得、軍部ににらまれれば紙の配給をとめられて実質的に廃業に追いこまれて行くという当時の実態である。

マックの統制はこれとは型が違ったらしい。
神経症的な毛嫌いはなく、かつ枠は一見大きいように見えたが、占領政策に障害ありと認めたものは、即座に出版を停止させ、抜け道は一切なかった

野呂栄太郎全集』の中断は、それが理由だときいた。
たかだか二千部三千部という、部数という面から見ればほとんど影響はあるまいと思われるものにまで直接的統制が及んだということは、新聞・放送は徹底的に統制されていた証拠といえるであろう。

そしてこの、日本的な抜け道がないということが、「東条時代よりきつい」という印象の原因であろうと思う。
事実マックは、「私信」すら遠慮なく組織的に開封して点検した

こういうことは、戦争中の軍部も行わなかったし、日本軍の占領地でも全く行われなかったそうである。
ほかの多くの例は除くが、あらゆる点から見てマックの言論統制が戦争中より徹底したものであるという古い出版人の意見は、妥当性があると私は思っている。

ただ彼は軍部よりはるかに巧みであって、一般の人びとにはほとんどそれを感づかせず、「言論」が自由になったような錯覚を、統制した新聞を通じて、人びとに与えていたのである。

そして今でも人びとは、この錯覚を抱きつづけている。
民主主義と軍政の併存(?)は、実は、この錯覚の上に成立った蜃気楼にすぎない。

プレスコードによって情報源を統制してしまえば、あとは放っておいて「自由」に議論させればよい
そしてその議論を誘導して宣撫工作を進めればよいわけである。

この点日本の新聞はすでに長い間実質的には「大日本帝国陸海軍・内地宣撫班」(と兵士たちは呼んだ)として、毛沢東が期待したような民衆の反戦蜂起を一度も起させなかったという立派な実績をもっており、宣撫能力はすでに実証ずみであった。

これさえマック宣撫班に改編しておけば、占領軍に対する抵抗運動など起るはずはない、と彼は信じていた。

これは私の想像ではない。
私にはっきりそう明言した米将校がいる
そしてそれはまさに、その通りになった。

「史上最も成功した占領政策」という言葉は、非常な皮肉であり、同時にそれは、その体制がマックが来る以前から日本にあり、彼はそれにうまくのっかったことを示している。
そしてこれは戦争中の軍部の位置にマックを置いてみれば明らかであろう。

(次回に続く)

【引用元:ある異常体験者の偏見/洗脳された日本原住民/P224~】


プレスコードという単語は聞いたことがあっても、その実態となるとその具体的な内容を知っている人はあまり居ないのではないでしょうか?

私もその一人でした。

単語そのものは知られていても、その具体的内容となると(?)であるのは、プレスコードが大成功を収めた「証」なのかも知れません。

上記の山本七平の指摘を見ると、情報の徹底的統制と「あることを知らせないために百万言語る」という言葉の隠蔽性を併用した”宣撫工作”というのは、単なる言論弾圧と違って表に出にくいものなのだなぁ…と思いますね。

インターネットが発達した現代では、なかなか上記のような宣撫工作は通用しづらい環境になってきたと思いますが、今でも「グーグル八分」という言葉があるように、情報の統制というのがあると考えた方がよいかもしれません。

今後、宣撫工作として用いられるのは、直接的な言論弾圧ではなく、もっぱら世間の耳目を逸らす為に「あることを知らせないために百万言語る」ような隠ぺい工作、そして、過去記事でご紹介した「アントニーの詐術↓」を利用した”扇動”による言論封殺の併用という形だと思います。

★アントニーの詐術【その1】~日本軍に「命令」はあったのか?~
★アントニーの詐術【その2】~日本軍の指揮官はどのようなタイプがあったか?~
★アントニーの詐術【その3】~扇動の原則とは~
★アントニーの詐術【その4】~同姓同名が処刑されてしまう理由~
★アントニーの詐術【その5】~集団ヒステリーに対峙する事の難しさ~
★アントニーの詐術【その6】~編集の詐術~
★アントニーの詐術【その7】~問いかけの詐術~
★アントニーの詐術【その8】~一体感の詐術~

原発事故という耳目を集める大事件が続いている今現在の日本は、そのような扇動が上手く行われ易い言論空間になっているように思えてなりません。

そうした扇動に乗せられないようにするためにも、日本のマスコミというのは、今も昔も「大日本帝国陸海軍内地宣撫班」であるという認識を持ち、こうした宣撫工作の基本構造を押さえた上で、個々の情報リテラシー能力の向上を図っていくしかないのでしょうね。

山本七平の解説は、そうした事に気付く為のベストテキストだ…と私は考えています。

さて、次回はこの宣撫工作の具体的な例について触れている箇所を紹介して参ります。
ではまた。

【関連記事】
◆洗脳された日本原住民【その1】~宣撫工作に利用された「日本国憲法」~
◆洗脳された日本原住民【その2】~日本人がフィリピン人のように見えた理由とは~


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