一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

イージス艦の事故と「危険予測力の欠如」

イージス艦の事故も、どうやら大臣の去就にまで発展しそうな勢いですね。
なにやらマスコミの報道や護憲派のブログなど見ていると、自衛隊に対する憎しみの様なモノを感じてしまうのは私だけではないのではないでしょうか。

私もネットサーフィンしていて初めて知ったのだが、過去にこうした事故↓が起こっていたことを知っている人がどれだけいるだろうか?

玄界灘漁船「第18光洋丸」沈没事件と水産庁取締船「からしま」衝突事件とは?

この事故の報道と、今回のイージス艦の事故報道との間にはすごい落差がありすぎる。「日本人の身内に厳しい姿勢」を考慮しても、こうしたマスコミの姿勢には不信感を抱かざるを得ないし、マスコミ報道を鵜呑みにしてはならないと思う。

ところで、「逆説の日本史井沢元彦著)」シリーズをご存知の人も多いと思いますが、今回のマスコミの報道姿勢や護憲派の態度を見ていると、昔読んだ井沢氏の主張を想起せざるを得ませんね。

井沢氏の主張を簡単に要約すると以下のとおり。

1.日本人は、ケガレ(穢れ)信仰を持っている。
2.ケガレ信仰は、「差別」を生む。
3.死のケガレ(死穢)に触れる職業(皮革職人から兵士まで)は、差別される。

つまり、「護憲派」の人々が、自衛隊をまともな存在として認めようとしないのも、この「ケガレ信仰」に基づくものであり、自らの”ケガレ信仰に無自覚なまま”自衛隊を差別していると、井沢氏は指摘しているわけなのですが、激しさを増すばかりの自衛隊バッシング報道等を見ていると、改めてこうした「差別」が底にあるんだろうなぁと感じてしまうわけです。

まあ、今日の本題はそのことではないので、これ以上、ケガレ信仰については書きませんが、興味のある人はぜひ「逆説の日本史4/ケガレ思想と差別の謎」を読んでみましょう。

今日は、イージス艦の事故に絡めて「危険予測力の欠如」について考えてみたい。

今回の事故は、イージス艦と漁船の双方が、予想される危険をきちんと予測していればまず起きなかったはずですなんですね。ところが、実際にはこうした悲劇が起こってしまった。

もちろん、海自側は国防を担うプロなのですから、仮に漁船側に過失があったとしても避けることのできる危険回避がとれる状態でいるべきでした。

ところが、実際には、前回の記事で引用した西村氏の指摘にもありますが、


この度のイージス艦も、自艦の損失は即我が国防衛体制の破綻であると認識し、自艦へのあらゆるものの接近に神経を研ぎ澄まし、接触など断じてありえないという体制

この体制が整えられていなかったことを事故により見事に露呈してしまいました。この点において海自は一点の弁明も出来ないのは明らかで、非難されてもしようがないでしょう。

一方漁船の方も、適切な回避行動がとれるはずなのに取らなかったのはなぜなのか?操船していた2人とも行方不明となっているので真相はわかりませんが、他の漁船が回避できたのですからこちらにも当然いくばくかの過失はあったはずです。(もちろん、漁船側に過失があったということで海自の責任が軽くなるわけではありませんヨ)

そこで、今日の主題に入りますが、そうした海自の”たるみ”の原因を、西村氏は、危機管理体制を整備しない「政治の不作為」に求めていますが、果たして原因はそれだけなのでしょうか?
それよりもっと、海自側・漁船側に共通する根源的な原因があるのではないかと私は思うのです。

基本に忠実であれば起きないはずのミス。そうしたミスによって起きる信じられない事故。
最近、そうした事故のニュースが増えていると感じませんか?

今回の事故に接して、思いだしたのが過去に読んだカムイスペースワークスブログのこの記事。
(このブログは、北海道でカムイロケットを開発している植松先生や永田先生が書いているのですが、示唆に富んでいて考えさせられるブログです。)
私には到底書けないような素晴らしい文章なので、以下長くなりますが引用させていただきます。

だんだん危険が増していく

深くて狭い配管の中で、ガソリンエンジンを使って作業をして、作業者が亡くなってしまう事故が発生しました。
しかし、これは、ありえない事故です。
どう考えたって、作業をする人たちにとって、それは死以外の何者でもないからです。
そんなところでエンジンを使うなんて・・・。
持って入るのも大変だったろうに、苦労して持ち込んだと思います。
それとも、間違いなく死ぬようなことを命令されて、逆らえないのでしょうか?
戦争末期の日本状態?
だって死んじゃうんだよ?嫌だって言えないの?
過労や、長時間勤務とは別次元の話です。
間違いなく、死ぬ選択ですから。
あくまでも憶測でしかありませんが、作業した人たちが、危険性を理解していなかったのかも・・・。

以前、東海村で臨界事故が起きたことがあります。
でも、この場合も、作業をしていた人たちが、危険性をそんなに認識していなかったという報告を読んだことがあります。

東京ディズニーランドでは、年末から立て続けにインシデントが発生しています。
3回インシデントが発生しているから、そろそろけが人が出るかも・・・。

実は、これらのニュースを見ていて心配になるのは、人間の問題です。
社会は基本的に人間の良心や常識に依存しています。
しかし、そういう社会は、人間の良心や常識が欠けると、維持できなくなります。「そんなことするわけないしょ?」ということをする人が増えると、当然、あり得ないような事故が生じます。

最近、軽自動車に軽油を給油してエンジンをダメにしてしまうというトラブルも増えているようですが、これも、従来のドライバーからすれば、ありえない事故です。

以前、工作教室かなにかに、学生さん達が手伝いに来てくれたことがありました。
そのとき、「生まれて初めてカッターを使う。」と言っていた男の子がいました。
正直、見ていて明らかに危険です。
でも相手は20歳を越えています。あんまりとやかくいうのもどうかな・・・と思っているうちに、開始して5分で指を切りました。
まあ、ちょっと刺しちゃった程度なので、安心したのもつかの間、たちまち顔面が蒼白になり、ふらふらしています。しょうがないから、長いすに寝かせました。

カッターを使ったことがない。
怪我をしたことがない。
血を見たことがない。
ないないづくしです。

でも、そういうことは、履歴書に書かれていません。
じゃあ、履歴書には、カッター使用経験の有無や、はさみの使用経験の有無、なんてのも記入してもらうべきなんでしょうか・・・。それも不毛です。

いま、社会で、教育システムや、法律を考えて制定している人たちは、ほとんどみんな、年配です。
そういう人たちは、いまの子ども達とちがう経験を積んでいます。
だから、そういう人たちの常識と、いまの子ども達の常識はちがいます。
だから、年配の人が作るきまりは、いまの子達にとっては、ずれていると思います。

子ども達になにもさせないと、何もできなくなります。
まだはやいから。まだ子どもだから。と言っていると、永久に子どもです。
1発目からうまく行く事なんてこの世にありません。
自分だってそうだったでしょ?1発目でうまく行ってる?
そしてまた、過去の失敗は汚点ではありません。
それは、経験です。
その過去がなければ、いまの自分はいません。
過去に嫌な思いをしたり、辛い思いをしたり、人に迷惑をかけたり、いろんなことをして、いろんな目にあって、そして、いまの自分がいます。
だから、過去の失敗をとやかくいってもしょうがありません。
だいたい、数年で人間の細胞なんて全て入れ替わるんだから、数年前の話をされても、当事者はすでにこの世にいませんね。

おそらくこれから、「ありえない」事故が急増すると思います。
そして、保証や責任の概念が、今以上にゆがむでしょう。
それは偏に、人的資質の問題です。教育の問題です。

昔は、中学校には職人肌の技術の先生がいました。
(いまもわずかにいますけど・・・)
そういう先生は、厳しかったです。
でも、技術に興味のある子は、そういう先生になつきました。
また、家庭科の先生もいました。料理のプロでした。
学校の中に、社会につながるプロがいました。
でもいまはほとんどいません。(私立学校はそういう先生を大事にしているところも多いですけど。)
いまは、「受験対策のプロ(プロでもないか・・)」が、沢山います。
子ども達は、「受験」という価値観の中で生きています。
それ以外を、知りようがありません。関わりようがありません。
せいぜい、コンビニか飲食店、レンタル店でのバイトしかないのです。
職場体験もありますが、すでにかなり不器用で、興味を持たない子達に、させられる仕事はほとんどありません。
「掃除しておいて」と言ったとしても、掃除の仕方まで教えなければいけませんから・・・。ぞうきんさえ絞れないし、洗剤も使えないし、あげくは、手が荒れるだの、水が冷たいだの、汚いだの・・・。

でもね、それは、彼らに経験がないからだけです。
経験さえすれば、みんな能力が高まります。大丈夫なんです。

ムシキングというアニメの中で、本が好きな男の子を亡くしたお父さんが、いつまでもその子の幻影を追う、というような話があります。
お父さんの頭の中のその子は、図書室から一歩も出ずに、毎日本を読んでいることになっています。
ふと思いました。
図書室から一歩も出ずに、図書室にある本の内容をすべて暗記したとしても、それは、自身が本になってしまうのと同じでは・・・?
本に書かれた文字を、心と体を使って現実にするのが、人間の役目では・・・?
ネットで検索した知識しか持たない人間は、ただのネット端末でしかなく、本の知識しか知らない人間は、本でしかありません。
人間は、知識しかない場合には、物体になってしまいます。
人間は、動けるのです。だからこそ、動かないといけません。

知る。だけではダメです。
やる。を伴わないと。


知識とデーターの量だけしか評価されないいまの子ども社会。
スポーツだってあるじゃん!という人もいるかも知れないけど、あれはCPUの演算速度や、液晶画面の解像度、程度のスペックのような気がします。
大事なのは、その知識や運動能力を使って、何をするのか?です。

アポロ計画で使用されたコンピューターよりも、遙かに遙かに高性能なコンピューターを有する僕らは、何をしているのでしょう・・・。
ネットサーフィン? 掲示板への罵詈雑言の書き込み?

世の中がどんどん悪くなっていくと、とても悲しいけど、少しうれしい。
なぜなら、頑張れば頑張るほど、きっと、自分たちが有利になるから。
自分が上がる以上に、まわりが下がると楽です。とても悲しいけど。

子ども達が持つ能力を、ただ押しつぶしてしまうような社会を変えたいです。
有能な人の能力を、ただ押しつぶしてしまうような企業を変えたいです。
日本国は、日本人の能力をいかにして発揮させるかを考えるべきです。
いかに考えさせず、判断させず、ではいけません。

考えることは価値です。
工夫することは価値です。
それを実証していかないといけません。
頑張らなくちゃ。

これからは、遊園地のスリルは、よりリアルになると思いますよ。
くわばらくわばら。

読んでみていかがですか?植松先生の憂国の情が伝わってきませんか?私は彼のブログを読んでいると、「これからの子供たちのために日本を何とかしたい、変えたい」という思いをひしひしと感じます。(余談ですが、こうした先生が活躍すれば日本の未来もきっと明るくなると思うのですがね)

植松先生は、この問題は、最終的に「教育の問題」に帰結すると指摘されましたが、私もそのとおりだと思います。

当然予測できるはずの危険を予測できない。想像力の欠如した人間が増えてしまっている。どうしてそうした人間が増えてしまったのか?植松先生と重なるところもありますが、私も自分なりに理由を考えてみました。

・詰め込み主義の勉強一辺倒で育っているから?
・余りにも過保護だから?
・生活が便利になりすぎて適応能力が衰えているから?
・自分さえよければという風潮が蔓延しているから?
・経験が足りないから?
・技術がブラックボックス化してしまったから?
・システムを作った人たちが続々リタイヤしているから?

う~ん。なかなか思いつかない。難しい(汗)。

やはり、この際、今までの教育のどこに欠陥があったのか見直し、この問題をフォローしていく必要があるのではないでしょうか。この事故をきっかけに、こうした問題も考えてみるべきなのではないでしょうか。

自衛隊の今回の事故は、この問題の現象の一つの表出に過ぎません。

「報告が遅れた」とか
「隠ぺい工作があった」とか
「自衛隊が悪い」など。

これらの追及も大切なことかもしれませんが、「危険予測力の欠如」。これは我々が考えていかなければならない、意外に重要な問題なのではないでしょうかねぇ。


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コメント

コメントありがとうございます

田柄さん、こんにちは。
早速のコメントありがとうございます。
過分なお褒めのお言葉を頂きまして、恐縮です。

私のほうこそ、お玉さんの処でどんな人でも田柄さんのコメントには、真面目に返答を返すのを見るにつけ、見習わなければならないな、と思っております。

私のブログも始めたばかりで、いまいち方針やスタイル等も確立できていませんので見苦しい点などあるかと思いますが、これからも宜しくお願いします。

  • 2008/03/01(土) 11:10:04 |
  • URL |
  • 一知半解男 #-
  • [編集]

おめでとうございます。

ブログ始められたんですね。
お玉さんのところで、いつも真面目にコメントされているのを見て、凄いなぁ・・と感じておりました。

真面目に自分の意見を発信するのは、本当に大変だと思います。
でも、必ずご自身にとってプラスになりますから・・・・って、いつも卑怯コメントばかりの私が言うことではないですね(笑)

これからも、読ませていただきます。
頑張ってください。


  • 2008/03/01(土) 06:24:50 |
  • URL |
  • 田柄 #-
  • [編集]

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Author:一知半解
「一知半解知らずに劣れり」な自分ではありますが、「物言わぬは腹ふくるるわざなり」…と、かの兼好法師も仰っておりますので、ワタクシもブログでコソーリとモノ申します。
一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
日々のツイートを集めた別館「一知半解なれども一筆言上」~半可通のひとり言~↓もよろしゅう。

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