一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

名文章ご紹介シリーズ【その8】~日本語では戦争はできない~

このコーナーは、山本七平の著作の中から、読んだ私が「うむ、なるほどっ」と感心した文章を選りすぐり、私の下手な解説抜きでご紹介しようというものです。

今回は、日本語と軍隊語の違いについて。

私が、常々赤旗のスローガンに違和感を感じるのも、赤旗の表記にそういう傾向があるからかも知れません(そうではなく、単に私の気のせいかも知れませんが…)。

それはさておき、このコーナーを始めるにあたって約束した、引用は800字以内…は守れそうにありません。紹介したい部分が多すぎ!(苦笑)
長い文章ですが、ご勘弁願います。



軍隊語とは、単なる言いまわしや表現の問題ではなく、主語や時制が明確でない日本語では、軍隊の運営も戦争もできないがゆえに特別に造られた言葉であって、この言葉を正しく分析すれば、それだけで戦争というものの実体がつかめるのではないかと思われる言葉である。従って語系が違うと考えた方がよいかも知れない

「大阪弁では喧嘩はできない」などといわれるが、もっともっと徹底した意味で「日本語では戦争はできない」のである

私自身はこのことを非常に誇りに思っている

たとえば普通の日本語の「お待ちしております」では戦争はできない。
そこで軍隊語では「小官当地ニテ貴官ノ来訪ヲ待ツ」という言い方になるわけであって、この語順が何語に一番近いかは説明するまでもあるまい。

しかしそれだけではない。軍隊語といってもいわば「軍隊文語」「軍隊口語」「将校語」「兵隊語」の別があって非常に複雑で、その表現も実に多岐にわたるが、これらの言語の背後にある「哲学」とでもいうべきものは、言うまでもなく、人間を戦争にひきずり込むこと、いわば「戦争指向の精神構造」に基づく言語哲学とでもいうべきものである。

それは厳然として存在するものであって、そして、存在するのが当然である。

軍隊時代、自分の方から興味をもったものと言えば、この「軍隊語」と「軍隊内地下出版物」だけだが、軍隊語の方は、私が本部付で常に「命令」「報告」「指示」等の起案・起草をやらされたため、否応なしにこれと取っ組んでマスターしなければならないという事情も確かにあった。

しかしそれ以上に興味をもったことも確かで、今でも日本語と軍隊語の差はほぼ正確に指摘できると思う。

私はいつもこの二つの言葉を比較して、「なるほど、戦争とはこういう言葉を使わないと出来ないものか! そして、こういう言葉を使うことは、戦争を指向する証拠のわけか!」と思っていた。

言葉そのものから体系的に組みかえて行かない限り戦争はできないのだから、軍隊語は「戦争語」だといっていい。

前に新井氏(註…毎日新聞社記者で山本七平の論争相手)の文章に軍人的断言法があると書いたが、新井氏はむしろその要素は少ない方で、ひどい人になると昔の軍隊語と全く同じ語系の言葉で、平気で、いわば「戦争語で平和を叫んでいる」のである

これはその昔「……東洋平和のためならば、なんて命が借しかろう」という軍歌をわれわれに歌わせた軍人たちが、「軍隊語=戦争語で平和を叫んでいた」のと全く同じで、私にとっては、これくらい気味の悪いものはない

というのは、内容は平和でも言葉自体が戦争を指向しているからである。両者とも、どう見ても嘘をついているとしか思えない

それはその内容をその言葉自体が否定していることから明らかなはずで、平和は「平和語」でしか語れないはずだからである。

by山本七平

【引用元:ある異常体験者の偏見/軍隊語で語る平和論/P36~】



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