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山本七平マンセーブログ。不定期更新。

自己欺瞞と偽りの謝罪論【その2】

今日は、以前ご紹介した記事自己欺瞞と偽りの謝罪論【その1】の続きを紹介していきます。
日本がアメリカを赦す日日本がアメリカを赦す日
(2001/02)
岸田 秀

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前回からのつづき。

■脆弱な論理

この集団的自己欺瞞が敗戦後の日本を広く支配する共同幻想となったため、大東亜戦争にもいくらかはプラス面があったなんて言うと、いや、この戦争を大東亜戦争と呼んだだけでも、すぐ右翼だと決めつけられました。

僕は別に大東亜戦争という呼び方にこだわっているわけではありませんが、太平洋戦争では中国との戦争が含まれないし、アジア・太平洋戦争とか極東戦争とかいうのはなじみがないし、右翼ではないつもりですが、まあ、大東亜戦争でいいんじやないかと思います。

それにしても、そういう決めつけ方は、戦争中、ちょっとでも戦争をいやがったり、日本の勝利を疑ったりすると、非国民とされたときの決めつけ方とまったく同じなので、この両者は、方向は逆ですが、同種の現象であることがわかります。

偽りの共同幻想は、基盤も構造も脆弱なので、ちょっとでも反対や疑問を許すと、すぐ崩れてしまいそうですから、神経質に反対や疑問を抑えておかねばならないのです。

両者に共通なこのような決めつけ方は、敗戦前の共同幻想も敗戦後のそれもともに、自己欺瞞にもとづく偽りのものであることを示しています。

自分と反対の主張に対して不寛容な主張は、それだけで根拠薄弱な主張と見ていいでしょう。

イギリスだってインドを何百年にもわたって支配し、搾取し、インド人虐殺を繰り返しているのに、インドに謝罪しないし、あの卑劣なアヘン戦争についても中国に謝罪しない。フランスだってベトナムに謝罪しない。オランダだってインドネシアに謝罪しない。

それどころか、この前、オランダのベアトリクス女王が戦後初めてインドネシアを訪問したとき、オランダ人がインドネシアにいたことはオランダの利益にもなったが、インドネシアのためにもなったと、ぬけぬけと演説しました。

アメリカだって原爆について日本に謝罪しない。占領時、日本女性を従軍慰安婦に使ったことについても謝罪しない。

これらの事実を挙げて、日本も、大日本帝国が諸外国に与えた損害に関して謝罪する必要はない、と主張する人たちがいますね。

欧米諸国は謝罪しないのに、悪いことをしたのは欧米諸国よりずうっとあとのことで、しかも、規模も小さかったのに、なぜ日本だけが謝罪しなければいけないんだ、という論理ですね。

日本の謝罪が必要ないと主張する人たちは、アジアヘの日本の進出を侵略ではない、少なくとも単なる侵略ではないと考える人たちで、ナショナリストと言っていいのですが、彼らは矛盾していると思うんですがね。

彼らは、ナショナリストであるだけに、欧米諸国のアジア侵略、植民地主義を激しく攻撃するんですよ。

しかし、日本は謝罪する必要がないという彼らの論理は、論理的に突きつめてゆくと、イギリスもフランスもオランダもアメリカも謝罪する必要がないことになってしまいます

そうならないためには、日本のアジア支配はアジア解放のためで、欧米諸国のアジア支配は搾取のためだったという理論を立てねばなりませんが、この理論はどうしても弱いですね。

それでは、日本のインドネシア進攻は侵略で、オランダのインドネシア支配はインドネシア人のために優れた文明をもたらすためだったとするオランダ人と同じレベルに堕ちてしまいます

ナショナリストならナショナリストでいいですが、欧米の植民地主義を非難し、欧米がアジアを侵略し、搾取したことを謝罪しない点を批判するのなら、同時に、日本が謝罪しないことについても批判しないと、論理が一貫しないですね。

要するに、日本は謝罪する必要がないと主張する人たちは、論理的一貫性など無視して、自己中心的に気分でものを言っているところがあるように思います。

こちらから謝罪するのは癪だ、と。しかし、欧米の植民地主義も癪だ、と。

彼らは、自分たちに都合のいいことを、その都度、言っているに過ぎないのではないでしょうか。

確かに、どこの国も自国に都合のいい歴史をつくっている、というところはありますね。

昔、フランスのストラスブール大学に留学していたとき、同じく留学生のイギリス人が、日本のことを、朝鮮を植民地にしてとか、満州をどうのこうのしてとか詳しく知っているのに、セポイの反乱のことを知らなかったので、びっくりしたことがありますが、イギリスの学校では、満州事変のことは教えても、セポイの反乱は教えないんですかね。面白いですね。

近頃は、イギリスだってもうそういうことはないと思いますが……。(注1)

しかし、謝罪を支持する人たちも首尾一貫しているとは言えないですね。

相手がガミガミうるさく言うものだから、心のなかでは悪かったと思っていないのに、「平和と友好のため」ここは頭を下げておこうなんて、とんでもない無節操なことをやりかねないところが一部の政治家に見られます。

卑屈というのは、そういうことを言うのです。

謝罪するのなら、何ゆえに謝罪するのかに関して一貫した理論を築き、それにもとづいて一貫して謝罪すべきです。

少々の金で済むのならと、理の通らない謝罪をしたりすれば、あとで取り返しのつかない禍根を残します

そして、同じ理論にもとづいて、日本が謝罪を要求すべきところは断固として要求すべきです。

従軍慰安婦に関して、どこかですでに書いたことがありますが、支配下の国の女たちを自軍兵士のための慰安婦として使うことは謝罪し補償すべき犯罪であるとの理論を立てたならば、日本は、韓国などに謝罪し、補償すべきであるし、承諾されるされないは別として、アメリカには謝罪と補償を求めるべきです。

アメリカ軍は、占領中、日本女性を慰安婦にしていたのですから。

もうだいぶ昔のことだし、アメリカとは友好関係にあるし、どうせ相手にされないだろうし、そのようなことで今更アメリカに謝罪と補償を要求しても始まらないと考えるのでしたら、韓国などにも謝罪や補償をすべきではありません。

どちらの側に立つにせよ、必要なのは首尾一貫性です。それがないと大金を払って軽蔑を買うことになります

(後略~)

【引用元:日本がアメリカを赦す日/第九章 侵略と謝罪/P183~】


日本の戦争責任を巡って、様々な意見や立場がありますが、こうやって岸田秀の記述を読んでみると、いずれの立場にも「首尾一貫性」という問題があるのがわかりますね。

南京大虐殺従軍慰安婦問題を追及するのに熱心な人たちというのは、えてして異なる意見に対して非常に非寛容かつ否定的ですよね。

それは、異論を受け付けない護憲派ブログや、例えば拙ブログのコメント欄でもおなじみのApeman氏の言動を見れば、誰しも納得していただけるのではないでしょうか。

これは、やはり岸田秀が指摘するように、「偽りの共同幻想にかられ、自己欺瞞に陥っている」が故としか思えません。結局、自己欺瞞に基づく自我が崩されることに、本能的に危機感を覚えてこうした行動に走ってしまうのでしょう。

幸い、このような偽りの共同幻想にひたる人たちというのは、ネットの普及や中韓の振る舞い等の影響により減少傾向であると見てよいでしょう。

そのかわり、日本無罪論に同調する人たちが増えているのは間違いないと思います。
「なぜ、日本だけが責められなくちゃならないんだ!」という感情にも訴えることができるので、こうした人たちが増えるのも当然ですね。田母神さんが、支持されるのもそうした影響でしょう。

そして、確かに日本無罪論を唱える人たちの傾向として、欧米の植民地支配を批判する意見が多いような気がします。
これは、一種の「負い目の裏目(注)」的な行動でもあるんでしょうね。

(注)…紀南方面?の言葉。「だれかに何らかの負い目を感じている者は、その相手に何か失態があったときに余計に強く言いたてるものだから用心せよ」という意味。下記↓記事も参照されたし。

【参照記事】
・戦争責任から、核兵器について、そして「負い目の裏目」について考える

ただ、岸田秀が指摘しているとおり、「日本を無罪としながら、欧米の植民地支配を糾弾する」というのは、確かに論理的に弱いのは間違いないですね。
ですから、「気分でものを言っている」という指摘は、ズバリ的を得ているでしょう。

ネット右翼といわれる人たちの大半は、こうした自己中心的な、いわば感情的な論理で動いてしまっているような気がしますね。

戦後自己欺瞞的な風潮が強かったせいで、その反動なのでしょうけど、ちょっと、危険な匂いがします。

けれど、やっぱり一番いけないのは、「相手がガミガミうるさく言うものだから、心のなかでは悪かったと思っていないのに、「平和と友好のため」ここは頭を下げておこう」というやり方でしょう。

これが一番、日本に害をもたらしたのではないでしょうか。

具体例を挙げるとしたら、河野談話でしょうね。

まさに戦後日本の「卑屈さ」が、この談話に表れているような気がします。
本当に取り返しのつかないことをしてくれたよなぁ、河野洋平という男は。

結局のところ、河野洋平のような政治家が活躍できたというのは、日本社会が卑屈であったからなのかも知れませんが、それでもやっぱり口惜しいですね。

何はともあれ、戦争責任を論じるなら、「論理の一貫性」を心掛けることが大事だということでしょうか。


【関連記事】
・いい加減「日本は悪くない」論をぶつのはやめましょう。事実の認定のみで争うべし!


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コメント

守さんへ、

守さん、コメントありがとうございます。
レスが大変遅くなって申し訳ありません。

>何で日本が当時の世界情勢に謝罪しなければならないのだろう

確かに仰るとおりなんですよ。
私も謝る必要はないと思っているのですが、それなら、自らの所業を棚に上げて、欧米の所業を批難するのは慎むべきですね。
そこを注意しないといけないと思うのですが…。

  • 2009/05/07(木) 22:53:57 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

次のようなイベントをやっております。
もしよろしければご参加ください。

4.28 パール判事の日本無罪論購入イベント
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/event/1240072811/

現在amazon3位です。

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右寄りの方は「基礎知識」として、
左寄りの方は「敵を知る」ために、
ぜひ御一読ください。

  • 2009/05/03(日) 14:22:57 |
  • URL |
  • 田中 #-
  • [編集]

何で日本が当時の世界情勢に謝罪しなければならないのだろう、当時の日本はソ連の脅威があり朝鮮のソ連侵攻が一番の脅威である
日本は独立国家としてソ連の侵攻を、抑える為、朝鮮を併合したのではないか、当時の列強諸国は植民地支配をしていだ訳ではないか

  • 2009/05/03(日) 00:28:22 |
  • URL |
  • #-
  • [編集]

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