一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

平和主義の欺瞞【その5】~本末転倒、憲法フェチ~

今回の記事も、「平和主義の欺瞞」シリーズの続きです。
今回は、9条護憲が、本来の目的を忘れて「フェティシズム」化していることについて、岸田秀の記述を紹介して行きます。

日本がアメリカを赦す日日本がアメリカを赦す日
(2001/02)
岸田 秀

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◆憲法フェティシズム

平和主義の問題へ戻りますが、平和国家日本というイメージもいかがわしい限りです。

これも、僕に言わせれば、ごまかしです。日本が平和国家なんて嘘です。

「俺はみんなと仲良くしたいんだ、喧嘩は嫌いだ、暴力はいけない」と言いながら、暴力団員(米軍)に用心棒を頼んでいる(駐留してもらっている)お金持ちのようなものです、今の日本は。

しかも、子弟(自衛隊)をその暴力団員に弟子入りさせて喧嘩の腕を磨いてもらっています。このようなお金持ちの説く平和主義を誰が信用するでしょうか

それなのに、日本が世界に誇る平和憲法なんて言う人がいます。

アメリカと安保条約を結んでいて平和憲法を誇るのは、あくどく稼ぐ高利貨しが慈善家の看板を掲げているようなもので、平和憲法はむしろ恥じて隠しておきたいと思うのがまともな神経だと思いますが、どうでしょうか。

嘘つきの泥棒が、わが家には代々伝わる「嘘をついてはいけない、人のものを盗んではいけない」という家訓があると自慢するようなものではないでしょうか。

いや、俺は安保条約に反対なんだ、アメリカ軍に基地を貸しているのは政府だと言い訳する日本人がいるかもしれませんが、この言い訳は、収賄を疑われた政治家が「秘書が、秘書が……」と言うのに似ていませんか。

日本政府は日本国民が選んだ政治家がつくっているのですから、政府のすることは国民に責任があります

僕は非武装中立主義者ではありませんが、もし、平和憲法を誇りたいのであれば、日本が現実に非武装中立を達成し、他の国々もそれを信用してからにすべきでしょう。

いずれにせよ、押しつけられたもの、現実の裏づけのないものを誇るのは、他人(他国)には了解不能のおかしなこととしか見えないでしょう。
現状では、日本の平和主義は偽善でしかないと思います。

どういう人がどういう状況で発言したかによって、同じことが真実になったり、嘘になったりします。そうした条件と無関係な、誰がどこで言っても真理であるような普遍妥当の真理なるものは存在しません。

それ自体はどれほどすばらしいことでも、自分一人で誇っているだけでは、精神分裂病者の誇大妄想と同じです。

誇るには、他者の支持がなければなりません。

ナポレオン自身が自分をナポレオンだと思っているのは誇大妄想ではないわけだけれど、それは、周りの人たちも彼をナポレオンだと思っているからです。

押しつけられた憲法を、日本人が金科玉条のごとく守っているのは、何かおかしいですね。
近頃いくらかタブーか弱くなったようだけど、しかしまだ、憲法改正というとあちこちから非難が飛んできそうだね。

護憲派というのがいて。憲法と結婚したなんて言ってた土井たか子さんとか。

憲法であれ何であれ、とにかく法というものは、国民のためにあるんで、国民のためになるかならないかで、いつでも変えることができるのでなければなりません。

それなのに、憲法と結婚したというのは、本末転倒です。
何か貞節を守らなければならない崇拝の対象みたいです。

言わば、憲法フェティシズムですね。それでは昔の国体と同じです。

国体というより、今はナショナル・アイデンティティというほうがわかりやすいかもしれませんが、いずれにせよ、国体も国民のためのものなのに、国体の護持のためとかで、無数の日本人が命を捧げたか、捧げさせられたかしました。

これも、国体を国民が命を犠牲にしても守らなければならない絶対的なものに祭り上げていたわけです。国体フェティシズムというわけですね。

性倒錯としてのフェティシズムは女体、女性器には興味がなく、それよりも女の下着とか靴とかに興奮するわけで、まさに本末転倒ですが、本末転倒であるという点では、憲法フェティシズムも国体フェティシズムも、さきに説明した勇気フェティシズムも、まったく性倒錯と同じです。

平和憲法は戦火に倒れた三百十万の生命という大きな犠牲を払って獲得したのだから、彼らの死を無駄にしないためにも、断固として守らねばならないとも言われます。

これもどこかおかしいですね。

憲法の是非は、現時点でそれが国民のために役立つかどうか、国民が守るべき正しい規範を示しているかどうかによって判断しなければならないわけで、それを獲得するために払った代償が高かったかどうかには関係ありません

これも、戦争中の大陸撤退反対論の論拠に似ています。

山本七平さんが言っていましたが、日中戦争が泥沼に入り、これ以上中国と戦っても国に益するところはないから、撤退すべきだという意見が何度も出たそうですが、そのたびに、それでは英霊に相済まぬという反対論が出て、撤退論は潰されたそうです。

ここで矛を収め、大陸から撤退したら、これまで尊い命を祖国に捧げた英霊の死は無駄だったことになる、そんなことは認めるわけにはゆかないというのです。

だから、戦争をつづけて、もっとたくさん英霊をつくろうというわけです。

戦争と平和の問題は、日本という国をどのような国にしたいかということともかかわることで、これに関しては、いろいろな態度があり得ると思いますが、どのような態度を選ぶにせよ、まず自己欺瞞から脱して考えるべきでしょう。

(次回へ続く)

【引用元:日本がアメリカを赦す日/第5章 平和主義の欺瞞/P111~】


日本人というのは、どうも感情に流されやすいせいか、上記の「英霊に相済まぬ」的論調が通用しやすい素地が多分にありますよねぇ。

本来そうした傾向を、マスコミが押さえるべきなのでしょうが、むしろ煽る場合が多いからなぁ…。

それはさておき、ちょっと前になりますが、護憲派の伊勢崎賢治氏が、マガジン9条で「9条は日本人には”もったいない”」という主張をしていましたね。

伊勢崎氏の言っていることもわからなくはないのですが、彼の前提↓がまず”幻想”ですよね。

なぜなら私たちは、第二次世界大戦後、軍隊を外に出さなきゃ守れないような「国益」は放棄したはずだからです。

極端なことを言うと、私たちの国に原油が入ってこなくなり、電気が止まろうが、それでも私たちは、軍事行動で国益を求めない、そう誓ったはずです。

9条は日本人には”もったいない”より一部抜粋】


これは一面的には正しいといえるかも知れません。
しかしながら、日本が実際に取った行動、即ち「放棄した代わりに、用心棒に頼って手を汚さずに国益を守る」よう行動したことを忘れた議論です。若しくは故意に忘れた議論です。

タテマエとしては正しいかもしれないが、それはあくまで虚像であって実態は違う。

第一、本当に「誓った」のでしょうか。仮に「誓った」としても「誓わされた」のが実情であって、とても「原油が入ってこなくなり、電気が止まろう」とも…なんて”覚悟”があったとは思えません。

実態を知りつつ、綺麗事を言っているのか、それとも本当にそうだと信じているのかわかりませんが、いずれにしても伊勢崎氏の前提はおかしい。

護憲派が”敗北”宣言するなら、それは「理想を貫きとおせなかったから」ではなく、「自己欺瞞をしていたことを認めること」が先ではないでしょうか。

「日本人には9条はもったいない」と高所からのたまうのは伊勢崎氏の勝手ですが、そもそも「非武装中立」などできた国など歴史上稀ですし、日本の置かれた状況を見ても有り得ません。

絵空事(非武装中立)が実行できないのは、恥でもなんでもない。絵空事を出来ると信じ込んで実行する方が、よっぽど恥ですし、愚かな行為でしょう。

「世界に誇る憲法9条」なんて能天気なことを言っている人びとは、少しは世間からどう見られているか自覚したほうがよろしいのではないでしょうか。

岸田秀の指摘するとおり「平和憲法はむしろ恥じて隠しておきたいと思うのがまともな神経」でしょうに…。

伊勢崎氏は、ガンジーのように「非暴力・不服従」を実践しうる偉大な人間なのかも知れませんが、私のような凡人や一般市民は、彼らとは違います。

市井の一市民には、理想に殉じて死ぬような覚悟や勇気はもともとありません。

伊勢崎氏から、「日本人には9条はもったいない」などと批難されても、いまいちピンとこないのは私だけでしょうか?
(てゆーか、そもそも私のような改憲派はお呼びでないのだろうな。”護憲派は”と本人も限定して言っているしネ。)

今日はこの辺でやめておきます。
次回は、極端から極端へ走る日本人について、岸田秀の記述を紹介していきたいと思います。

【関連記事】
・平和主義の欺瞞【その1】~日本人の平和主義は「強姦された女の論理」~
・平和主義の欺瞞【その2】~自己欺瞞によりますます卑屈になる日本~
・平和主義の欺瞞【その3】~現実を直視しなければ不可逆的に失敗する~
・平和主義の欺瞞【その4】~押しつけられた平和主義は平和の敵~
【参考記事】
・「ニセ物に固執する精神」~憲法改正がタブー視される理由とは~
・「自己欺瞞」と「精神分裂病/ストックホルム症候群」
・「内的自己」と「外的自己」とに分裂した近代日本/きっかけはペリー来航だった!?
・自己欺瞞と偽りの謝罪論【その1】
・自己欺瞞と偽りの謝罪論【その2】



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