一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

手段を選ばない政治家たち

民主党鳩山政権が誕生してからひと月以上過ぎましたが、野党の立場で唱えていたかつての主張と、現在の与党の立場での主張との違いがどうにも目立ちますね。

もちろん、実際与党の立場にたてば、現実的にならざるを得ないですから、主張も当然変化があって構わないのですが、あまりにも節操がなさすぎる。

そう思いませんか?

一方ではマニフェストに書いてあるから…と強引に実行に移し、都合の悪くなったマニフェストについてはあっさりと前言を翻す。まさにいいとこ取りなんですね。

政治とはそういうものかも知れませんが、自民党の頃はこれほどひどくなかったと思う。

そうなった理由のひとつに、民主党のマニフェスト成立過程に原因があるように思います。

何日か前の読売新聞に、イギリスにおけるマニフェストが作成される過程と、民主党のそれとの違いについて記事が載っていました。

イギリスの場合、まず政党の下部組織でどのようなマニフェストにするかオープンな議論が戦わされ、それが集約され、党員の合意の下にマニフェストが出来上がるわけです。

それが民主党の場合、選挙直前まで情報漏えいのないよう一部の政治家のみが関わることしかできず、大半の政治家・党員は蚊帳の外に置かれていた。

なぜそうなってしまったかと言えば、元々民主党というのは、安全保障や外交といった基本政策においてすら、合意が形成されていない単なる反自民の組織であるからでしょう。

オープンな場で、討議していたら収拾がつかなくなるからでしょうけど、マニフェストの成立過程一つ取ってみても、マニフェストという言葉は同じかも知れませんが、中身は全然違うわけです。

皆を納得させた上でのマニフェストではなく、合意に基づいたマニフェストではない。

そのため、マニフェストそのものに自信を持てず、それが故に、例えば前原国交相が八ッ場ダム建設中止で見せたような硬直姿勢になったり、逆にあっさり前言を翻す態度にもなる。

そうなってしまうのも、ニセモノのマニフェストだからなんでしょうね。

マニフェストもそうですが、鳩山首相以下閣僚の発言の軽さ。
これどうにかならないですかね。

もう少し、政治家が発する言葉に重みと言うものがあったはずなのですが、民主党の閣僚にはそれが微塵にも感じられない。発言が軽すぎるんですね。

そしてまた、マスコミも自民党政権の頃と違って、それほど追及しない。
それは政権発足間もない蜜月期だからなのかも知れませんが、もし自民党政権であれば間違いなく内閣が倒れるくらい追及したでしょう。

それほどの失策・醜態を、わずかひと月ちょっとでこれだけ晒しているにも関わらず、相変わらずマスコミの論調が鳩山政権に対して甘いのは、日本にとって間違いなく不幸なことだと私は思います。

まぁ、マスコミに期待する気持ちなど、はなから抱いていないので、やっぱりマスゴミだ…と改めて思うだけなのですが。

それはさておき、今日は、政権を取る為だったら、どんな空約束でも乱発した民主党の態度について関連すると思う山本七平の記述について紹介していきたいと思います。

正確に言うと、山本七平の記述を引用しながら解説をしている谷沢永一の著書「山本七平の知恵」からの記述になります(アマゾンで販売されている1992年に出版された「山本七平の知恵」はその後、改訂・改題され、現題は「山本七平の叡智」となっています。)

私の中の日本軍 (下) (文春文庫 (306‐2))私の中の日本軍 (下) (文春文庫 (306‐2))
(1983/01)
山本 七平

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(~前略)

私は軍が全く一方的に積極的に政治に関与したという戦後の見方に非常に疑念をもつ。

逆に、当時の政治家が、自己の立場を有利にするため、軍を政治にひっぱり込んだという面が確かにある。

記録は、特に「自民党の前身」政友会にこの傾向が強かったことを示していると思う。

軍には「軍人勅諭派(註1)」という非常に強いブレーキがあったのだが、政争以外眼中にない政治屋が、その手でこのブレーキをはずしたこと、これは否定できない

(註1)…明治天皇が陸海軍の軍人に下賜した勅諭。「政論に惑わず政治に拘わらず」と軍人の政治への不関与を諭している。wiki参照。

ところが戦後その人びとが、一切の責任を軍に押しつけ、ケロッとして「オレは戦時中アカだといわれたもんだ」などとヌケヌケと言っていた事実がある。

もちろんマスコミにもこれがある。

従って本多氏(註2)などの戦争責任の追及は、まるで名目的責任者を追及することによって責任を他に転嫁して自らを守る一種の「企業防衛」としか私には見えない。

(註2)…本多勝一。朝日新聞社の記者として活躍。wiki参照。

(後略~)

【引用元:私の中の日本軍(下)/捕虜 空閑少佐を自決させたもの/P263~】


本多勝一らが行なった戦争責任の追及が、マスコミによる「一種の企業防衛」に過ぎないという山本七平の指摘には鋭いものがありますね。

それはさておき、上記記述を引用しながら、谷沢永一が次のように解説を加えています。

山本七平の叡智(えいち)山本七平の叡智(えいち)
(2007/08/11)
谷沢 永一

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◆戦争責任は議会にあり

軍が一方的な横車を押した場合に、その軍の横車というものが、決して軍の力だけによって日本の政治を動かしたことはいちどもないのである。

日本は、丸山真男などの言うような「ファシズム国家」ではない。

ドイツはファシズム国家になって議会を停止した。

議会政治がドイツから失われてファシズム独裁になったが、日本の場合は、議会はずっと機能しつづけて、昭和二十年の五月のときにさえ帝国議会は正常に開催されていて、その開催に対して何らの抵抗、妨害はなく、粛然として行われていた。

だから終始一貫して日本は議会主義政治を守っていたのである。

そして、軍の意向、軍の横車は全部、議会に議席をもつ政治家の承認を経てそれが予算化されたのである。

チャーチルの一世一代の名文句「戦争責任とは軍に予算をつけたヤツだ」という名言がある。

軍は予算がなければ動けないわけで、その予算をずうっとつけてきたのは日本の議会である。

もちろん、先にも述べたとおり、その日本の議会の議会政治家および内閣の人たちを暗殺をもって脅迫したことは事実である。

しかし、少なくとも議員の相当多数が暗殺されて、議会が開催されなくなるということはいちどもあり得なかった。

だから責任は日本の議会政治家にあり、その議会政治家を選出した選挙民にある
これはもう理の当然である。

それから、当時は民政党と政友会という二党政治が行われていて、今度は民政党か政友会かというようにバトンタッチが実際行われていたのである。

だから世に二党政治があって、それがひょこひょこバトンを交代したら最高だという人は、それなら昭和元年から昭和二十年までの政治史をもういちど日本にやろうということか、と私は言いたいぐらいである

この場合に、この二党の最大の特徴は、いったん野に下ったら、こんど与党を責めるのに手段を選ばなかったということである。

それはどちらも共通している。

ところが、山本七平がいみじくも言っているように、どちらがその度がきつかったかというと、実は政友会のほうが度はきつかった。

だから、民政党の浜ロライオン内閣が軍縮をやったときに、軍縮をやったということを糾弾したのは政友会であって、鳩山一郎(註3)の有名な演説がある。

(註3)…現鳩山由紀夫首相の祖父。wiki参照

統帥権干犯というのは、北一輝が言い出して、軍部の青年将校がそのイデオロギーを担いだが、それだけでは野にあった単なる雑音にすぎなかった。

ところが、それを帝国議会の議場に持ち出しだのは政友会の生粋の政党政治家であったのだから、戦争責任というものは、最終的にはそこへいかなければならないということではないか。

【引用元:山本七平の知恵/第五章 日本軍と戦争責任/P188~】


wikiにもありますが、当時の鳩山一郎が、政争に明け暮れて軍の政治介入を招く片棒を担いでいたことが、後々の日本の破局にまでつながっていくわけで、谷沢永一が指摘するように戦争責任の一端があることは免れ得ないように思います。

戦前の政治家は、軍部を政争に引っ張り込んだ挙句、暴走させてしまいました。

自らの主張にとって如何に有利なことであっても、禁じ手を使うことは慎むべきであるし、それがその時、一時的に国民受けするようなことであっても、やってはならないことがあるはず。

戦前の反省をするとしたら、この点でしょう。

まぁ、鳩山民主党政権は、そういう禁じ手を使っているとまで思いませんが、偽のマニフェストを謳ったり、空手形を乱発したり、自民党を追及していた姿勢を自らには全く取らなかったり…と、どうしようもないですな。

挙句の果てには、一国の首相が、「恵まれた家庭に育ったものですから…」なんて言い訳するのですからひどいものです。

こういう政治家では、たとえ二大政党制が実現したとしても、うまく行きっこないですな。きっと。


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一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
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