一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

レイシスト的思考【その1】~まず国を想起するのが人種差別主義~

最近、また反捕鯨活動団体「シー・シェパード」のニュースが報道されることが多いですね。
彼ら自身の最終的な目的と言えば、環境保護活動を装った「金儲け」といったところでしょうね。
所詮は、テロリスト気取りのチンピラやくざみたいなものでしょうか(環境テロリスト扱いするする向きもありますが、本物のテロリストに比べては失礼にあたるでしょう。)

しかしながら、欧米社会には、彼らのような”チンピラやくざ”を支援する広範で根強い支持があるのは否定できない事実です。
もちろん、そうした世論の中には、純粋に鯨を獲る事に反対する意見もあるのでしょうが、その多くは、鯨を獲るような野蛮な日本人はテロに遭っても構わない、当然だと考えている人たちも多いのでしょう。

こうした考え方には、意識的であれ、無意識的であれレイシズム的思考が潜んでいて、それが「鯨保護」という美名をまといながら反捕鯨活動となって噴き出しているのだろうと思います。

こうした日本人を標的とした反捕鯨活動は、1970年代から始まっていたようなのですが、1975年に昭和天皇が初めてアメリカを訪問した際にも、「天皇への鯨デモ」として現われました。

そのことについて、山本七平が著書「日本人とアメリカ人」にて考察していますので、今回から何回かにわけて、その記述を紹介しながら、なぜこうしたレイシズムが、「鯨保護」という形態を取って現れるようになったのか、そしてこうした現象に対して、日本人はどのように対処していくべきなのか、というものを考えていきたいと思います。

日本人とアメリカ人―日本はなぜ、敗れつづけるのか (ノンセレクト)日本人とアメリカ人―日本はなぜ、敗れつづけるのか (ノンセレクト)
(2005/04)
山本 七平

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◆アメリカ人が激しく反応する”ある言葉”

戦後さまざまな米語が日本に流れ込み、あるものは訳語で、またあるものはカタカナ表記で通用している。

だがアメリカ人が相当に神経質な態度で使用し、ロにするかしないかは別として絶えずその言葉を意識し、どこかで強い影響を受けていると思われる強烈な言葉なのに、全く日本に流入しなかった言葉がある。

この言葉は、今後も日本に入ってくることはあるまい―それはレイシズム、およびレイシストである。(註1)
(註1)…実際、レイシズム/レイシストという言葉はネット上で飛び交っているので、一見、山本七平の言っていることは間違っていると誤解されそうですが、ここで彼が言いたいのは、日本社会の中では、レイシズム/レイシストという言葉は、社会的・政治的・公的な場に於ける用法・用語としての言葉として今後も使われる事はないという意味であると私は解釈しています。

人種差別主義(と訳してよいかどうかわからぬが)乃至は人種差別主義者というこの言葉の定義は、現地で確かめてみると非常に不明確で、時には、日本の「ファッショ」同様、政敵にはりつける意味不明のレッテルの標語のようにも見える。

従って「あいつはレイシストだ」といわれている政治家を、「人種差別主義者」と訳してよいかどうか、いやそういうレッテルをはる連中の方がはるかに徹底した人種差別主義者ではないか、と思われる場合もある。

政敵にレッテルをはるのはどこの国にもあることで、この点では日米に差はないかもしれぬ。

しかし、人種という意識なしで生活していける日本では、レッテルの言葉を「レイシスト」とするわけにはいかない。

従って、日本では知覚できず、現地で感じて知る以外にないアメリカの特徴の一つは、レイシストがレッテルになりうるその社会的背景だ、ということになる。

今回の訪米で探りたかった重要な点の一つは、それであった。

◆「人種意識」なしに生活できぬ米国

人種という意識なしに生活しろ、といってもそれはアメリカでは無理である。

たとえば「クリーブランドという狭い土地に住む人びとは民族別で約七十民族、これを人種別に大きく系統づけると……」といった話を聞くと、「フーム」といえるだけで、そこに住む人びとの「人種」という意識は、われわれには到底わからない。

だが、「すぐにこう人種と言い出すのがレイシズムなんじゃないのか」という素朴な疑問は出てくる。

そこで「そのう、そのように人種という意識で人を見ることがレイシズムになるんじゃないですか?人種という意識なしに、みな同じ人間という把握の仕方をすれば……」と日本的な ”人間として”的発想をのべれば、

「いや、そういう言い方をするのが最も悪質なレイシストです

現在アメリカでは、人種別に優位に立っている者と劣位にあるものとがいます。
従って同しでありません。

この”同じでないという現実”を無視して同じ人間だと強弁するなら、それは黒人やアジア人を”劣れる白人”と見ることになります。
『黒は美しい』も、有色人種雇用法等も、みな、そう主張するレイシストヘの抵抗です」となる。

なるほどそう聞けば「同じ人間なのに……」と言いたがる日本人がなぜ「天性のレイシスト」と言われるのか、ある程度は理解できる――この考え方を一応レイシズムA型としよう。

「では、人種の存在を認め、それぞれの人種が法的・社会的に平等であれ、と主張すればよいのですか」と質問すると、今度は別の人がいう。

それが南部のレイシストの典型的な論理です

黒人学校・白人学校を別々にし、両方に平等に予算を出しているから法的にも社会的にも平等じゃないかと。

あのリトル・ロックの闘争(註2)とは、そのレイシストの論理に抵抗したものです」と――「なるほど」と言わざるを得ない。

(註2)…以下、参考HP↓を参照のこと。
・リトルロック高校事件
・リトルロック危機の舞台
・3-7 『フォーバス知事の寓話』:リトル・ロック・ハイスクール危機
・リトルロック暴動~無名の9人の高校生たちに捧ぐ~


ではこれをレイシズムB型としよう。

だが、これじゃレイシストでないアメリカ人はいなくなってしまう。

少なくとも「人種」という意識なしで生活している日本人から見れば、そうとしか見えない。

つまり、A型といわれまいとすればB型になり、B型を避けようとすればA型と断定される。

これでは「気にいらない人間」にはだれにでもレイシストのレッテルがはれるはずである。

ではレッテルは別として、レイシスト、非レイシストはとこでどのように区別されるのか?

いや、なぜレイシズムが存在するのか?これは多人種国家の宿命であろうか?

そうはいえまい。
南米の多くの多人種国家には、レイシズムはないといわれるから―。(註3)

(註3)…アメリカ社会において現れる「現象」としてのレイシズムという意味だと思われる。ただ、南米に人種差別がないのか?と言われればそんなことは無いのではないかと私は思う。

◆まず「国」を想起するのが人種主義

一体「天皇への鯨デモ」や「鯨を殺すなキャンペーン」の正体は何なのか。

出発前に、日本で資料を調べただけで、その背後にあるものが「動物愛護」でも「資源保護」でもないことは、うすうす察せられた。

ではこれはレイシズムの一表現であろうか?

一表現とすればなぜこのような表現になるのか?
疑問は際限なくわいてくる。

だがそれらを探索する前にまず、レイシズムの定義を明確にしておかなければならない。

だがその定義は以上のように、きわめてはっきりしていない。
一体、レイシズムとは何を指し、レイシストとはどのような状態にある人を指すのか?

「そうですなあ……」といってから、堀内さん(四世、日系市民協会ワシントン支部長)はしばらく考えていたが、「具体例をひいて言いますと、次のような発想がレイシズムです」とつづけた。

その説明を要約すると、たとえば一台の車が来たとする。

「あ、車だ。ほう、フォルクスワーゲンだ、とするとドイツ製か」
これが普通の発想。

ところが、ショーウインドーをのぞきこむ。
そして「ありゃ、日本製品だ、ソニーの品か、一体こりゃ何だ、ヘエー、テープレコーダーか」となる、
前者とは、逆方向の発想、これがレイシズムであると。

簡単に図式化すれば、その発想が、製品→メーカー→国(民族・人種)という順序か、国(民族・人種)→メーカー→商品となるかの差だという。

こう言われると、何となくわかったようだが、さてその実感となるとなかなかつかめない。

だが後に私は、ロサンゼルスでウェートレスと話しているとき、堀内さんが言ったのはこのことだな、と感じたことがあった。

彼女は白人で学生アルバイトらしいが、日系・中国系・黒人に全く差別なく実に親切で、行きとどいていて、好感がもてる。
そのうえロサンゼルスは日系・中国系が多いから、レイシズム的雰囲気をわれわれは感じない。

彼女はコーヒーを運んでくると「ロサンゼルスをエンジョイしたか」といったようなことを言った。

私も何となくお世辞が出て「実にいい町である(いや、実際にはアメリカの中で、私にとっては最も魅力のない町だったが)。スモッグがひどいと聞いていたが、東京の方がはるかにひどい。これもラルフ・ネーダー(註4)などの運動の結果ですか?」とたずねた。

(註4)…アメリカの弁護士・社会運動家。長年環境問題、消費者の権利保護問題や民主化問題に携わっている。wiki参照。

その瞬間彼女は「でも、ネーダーはレバノン人ですから……」と答えた。

私の発想は、ロサンゼルス→意外にスモッグがない→反公害→ネーダーという順序である。

ところが彼女は、ネーダー→レバノン人→?……?で、その先には、固定化し類型化した”レバノン人”というイメージがあるのであろう。

この発想、ネーダーを一人間と見ないで、人種・民族というステレオタイプにまずはめこんでしまう発想が、レイシズム的発想であろう。

次回へ続く)

【引用元:日本人とアメリカ人/第七章 捕鯨禁止運動の背後にある人種主義に気づかぬ日本人/P150~】


まだこれだけの引用では、はっきりとレイシスト的思考がどういうものか、つかめないかもしれません。
次回では、より具体的な記述を紹介していきますので、お楽しみに。

余談になりますが、こうした思考をレイシズムとするなら、嫌韓である日本人もほとんどが該当してしまうでしょうね。
ただ、思考するだけにとどまるのなら、それをレイシズムと批難することは出来ないと思いますが。
問題は、この思考が思考の枠外をはみ出して、行動となってしまう場合なんでしょうね。

【関連記事】
・レイシスト的思考【その2】日本人→鯨殺し→悪人→日本製品ボイコット
・レイシスト的思考【その3】合理性の追求が、非合理的現象”魔女狩り”となって現れる
・「敵への憎悪」は理解できても、「人種的憎悪」は理解できない日本人


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テーマ:捕鯨・反捕鯨問題 - ジャンル:政治・経済

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コメント

陰湿化しているいじめと同じかも…

apさん、コメントありがとうございます。
レスが遅くなって申し訳ありません。

人種差別って昔は、ある程度ストレートに表現されてたのでしょうけど、今はそれが陰湿化し、環境保護等の美名に隠れて行なわれるようになっているようですね。

ところで、お勧めいただいた小林由美著「超・格差社会アメリカの真実」、早速アマゾンの書評を見てみました。かなり好評なようですね。今度図書館であったら借りてみたいと思います。ご紹介ありがとうございました。

  • 2009/12/14(月) 00:06:23 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

なんだか、難しそうな問題ですね。現在米国でレイシズムというと、黒人対非黒人と言う感じがします。
ステレオタイプはいけないのですが、民族の誇り、自分の文化背景を重んじるということで、あの人はどこどこ人だから、こういう特徴がある、というのは逆に賞賛の的になったり、プライドの根源になることもあるようです。
小林由美著「超・格差社会アメリカの真実」という本が、なぜアメリカの黒人問題がここまでこじれてしまったか、歴史的解説をされていて、面白いです。

  • 2009/12/11(金) 12:57:09 |
  • URL |
  • ap #qMROBYQM
  • [編集]

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「一知半解知らずに劣れり」な自分ではありますが、「物言わぬは腹ふくるるわざなり」…と、かの兼好法師も仰っておりますので、ワタクシもブログでコソーリとモノ申します。
一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
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