一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

生物としての人間【その1】~残虐日本軍を糾弾する左翼と、インパール作戦を称揚する右翼に通底する「生物学的常識の欠如」~

下記シリーズ記事『「トッツキ」と「イロケ」の世界』では、日本軍の実態に関する山本七平の記述をご紹介してきました。

・「トッツキ」と「イロケ」の世界【その1】~「神がかり」が招いた”餓死”という悲劇~
・「トッツキ」と「イロケ」の世界【その2】~現場の兵士が抱いた”やりきれない気持ち”~
・「トッツキ」と「イロケ」の世界【その3】~部付(ブツキ)はコジキ~
・「トッツキ」と「イロケ」の世界【その4】~大日本帝国陸軍の”大躍進”~
・「トッツキ」と「イロケ」の世界【その5】~二種類いるトッツキ礼賛者~
・「トッツキ」と「イロケ」の世界【その6】~「虚構の世界」が日本を滅ぼした~

これらの記事では、日本軍が持っていた欠陥の一つである「補給の軽視」と「その軽視がもたらした悲劇」について山本七平の実体験に基づく鋭い考察がありましたが、彼が指摘した「日本軍のもっていたあの病根とも宿痾とも病的体質とも先天的奇形ともいいたいあの体質」がなぜ生まれたのか、その”手掛かり”を、別の著書「日本はなぜ敗れるのか/敗因21ヶ条」から探っていきたいと思います。

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
(2004/03/10)
山本 七平

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◆第九章 生物としての人間

敗因21 指導者に生物学的常識がなかった事
敗因19 日本は人命を粗末にし、米国は大切にした。


■生物学

生物学を知らぬ人間程みじめなものはない。
軍閥は生物学を知らない為、国民に無理を強い東洋の諸民族から締め出しを食ってしまったのだ。
人間は生物である以上、どうしてもその制約を受け、人間だけが独立して特別な事をすることは出来ないのだ。


■日本人は命を粗末にする(一部)

日本は余り人命を粗末にするので、終いには上の命令を聞いたら命はないと兵隊が気付いてしまった。
生物本能を無視したやリ方は永続するものでない。
特攻隊員の中には早く乗機が空襲で破壊されればよいと、密かに願う者も多かった。


以上の二つの小松氏の言葉は、氏の『虜人日記』の「見方・考え方」の基調であり、ある意味では原点であろう。

本書はさまざまな面から評価できる本であろうが、小松氏自身が言われているように、本書のある一面は、すでに他の人びとも指摘していることかもしれない。

しかし、一見同じ指摘に見えて、それが、基本的には何か違うといった印象を人びとに与える大きな理由の一つは、氏が、農芸化学、すなわち醗酵という一種の「生命現象」を扱う専門家であったという点、一言でいえば「生物学者の戦場体験の記録」という点にあるだろう。

最初に記したように、私が、本書を読んで「三十年ぶりに本ものの記録にめぐりあった」と感じた一番大きな点は、氏が人間を「生物」と捉えている点である。

といってもこれだけでは読者には意味がわかるまいから、例をあげて説明しよう。

たとえば氏の記述にも、戦場のジャングルの実に残酷な記述は出てくる。
それは、そういう事実があったのだから当然だが、その記述にも、読者はいわゆる「残虐人間・日本軍」の記述とは何か違う点を発見するはずである。

どこが違うか。

いわゆる「残虐人間・日本軍」の記述は、「いまの状態」すなわちこの高度成長の余慶で暖衣飽食の状態にある自分というものを固定化し、その自分がジャングルや戦場でも全く同じ自分であるという虚構の妄想をもち、それが一種の妄想にすぎないと自覚する能力を喪失するほど、どっぷりとそれにつかって、見下すような傲慢な態度で、最も悲惨な状態に陥った人間のことを記しているからである。

それはそういう人間が、自分がその状態に陥ったらどうなるか、そのときの自分の心理状態は一体どういうものか、といった内省をする能力すらもっていないことを、自ら証明しているにすぎない

これは「反省力なき事」の証拠の一つであり、これがまた日本軍のもっていた致命的な欠陥であった。
従って氏が生きておられたら、そういう記者に対しても「生物学的常識の欠如」を指摘されるであろう。

氏は、ある状態に陥った人間は、その考え方もいき方も行動の仕方も全く違ってしまうこと、そしてそれは人間が生物である限り当然なことであり、従って「人道的」といえることがあるなら、それは、人間をそういう状態に陥れないことであっても、そういう状態に陥った人間を非難罵倒することではない、ということを自明とされていたからである。

次回へ続く)

【引用元:日本はなぜ敗れるのか/第九章 生物としての人間/P225~】


Apeman氏に代表されるような、いわゆる戦前の日本軍を糾弾してやまない左翼とは、まさにこの「自分がその状態に陥ったらどうなるか、そのときの自分の心理状態は一体どういうものか、といった内省をする能力すらもっていない」からこそ、平然と先人を批難できるのでしょう。

そのような輩に限って、博愛的な言辞を弄し、自分の意見に反対する人間を、反省が足りない軍国主義者だと一方的に決め付ける。

まさに「反省という語はあっても、反省力なきこと」の見本ですね。
本当に反省すべきは、「日本軍兵士をそのような状態に陥れたこと」のはずです。

それへの反省をなおざりにしたまま、残虐人間・日本軍という”藁人形”を叩き続けることが反省と勘違いしている馬鹿左翼があまりにも多すぎる。

このような勘違い左翼は論外ですが、一方で愚劣極まりないインパール作戦を礼賛するねずきち氏のような一部のネット右翼の思考にも、「生物学的常識の欠如」というものが伺えるのではないでしょうか。

左翼は、環境次第で人間が変わってしまうということすら思い至らないし、右翼は飢餓という状況に置かれても日本軍兵士が忠勇無比の存在であって残虐行為や略奪行為を働かないと思い込んでいる。

このように見てみると、両者の主張のベクトルは違えども、両者の思考の根本には、人間というものが生物学的制約を受けているという「前提」が欠如しており、通底するものがあるといってよいでしょう。

現代日本のような環境にあっては、飢餓状態に陥ることはまずありませんから、そのような「生物学的制約」に気付かないのは仕方ないのかもしれません。
痛い目に遭わないとわからないように。

しかし、そうした目に遭わなくても、そのことを気付かせてくれるのが、小松真一氏の「虜人日記 (ちくま学芸文庫)」であり、山本七平の記述であると私は考えています。
これこそが、彼らが後世の人間のために記してくれた貴重な「提言」だと私は思っています。

次回は、引き続き「生物学的常識の欠如」についての記述を紹介していく予定です。ではまた。


【関連記事】
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◆生物としての人間【その2】~理性信仰という名の空中楼閣~
◆生物としての人間【その3】~飢えは胃袋の問題ではない~
◆生物としての人間【その4】~飢え(ハングリー)は怒り(アングリー)~
◆生物としての人間【その5】~飢餓状態がむき出しにする「人間の本性」~
◆生物としての人間【その6】~日本は単に物量で負けたのではない~
◆生物としての人間【最終回】~人間らしく生きるために必要なこと~


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「ネット右翼」という言葉が生まれた理由:
「ネット右翼」とは、日本の崩壊を目的とする反日勢力が作った言葉です。
彼らの目的は、日本を大切にする保守・愛国系のネットユーザーを、危険な右翼団体のネット版であるように国民に植えつけ、発言を聞くに値しないとレッテルを貼ることにあります。
しかし、そもそも右翼団体(街宣右翼)とは日本人を貶めるための反日団体(在日朝鮮人など)による自作自演であることが明らかになっています。
つまり、そのようなレッテルを貼る人間は、反日工作員か、彼らの影響を受けてしまった人のどちらかなので要注意です。

  • 2010/06/25(金) 17:45:36 |
  • URL |
  • yuich #Cp5rMGHY
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