一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

「抑止力」論争を見て【その1】

鳩山首相の「抑止力」発言をキッカケに、海兵隊の「抑止力」についてあちこちのブログ上で侃々諤々論じられていますが、それを見て思ったことを書いていきたいと思います。

まずは、この問題を論ずるに当たって現状を分析してみます。

1.日米同盟の危機につながりかねない恐れ

この問題を巡って、よく単なる一基地の廃止に過ぎないと、さも簡単ですぐ実施できるようなことを言う人が居ますが、物凄く勘違いしていると思う。

グアム協定やロードマップを読んでみてもわかることですが、普天間基地の「移設」が条件となっている以上、仮に「移設」ではなく「撤去」ということになれば、数ある米軍用地の返還やグアムへの機能分散や米軍再編などにも悪影響を及ぼすことは必至です。

そうなれば、日米同盟の深化どころか、形骸化に進みかねず、その影響は、日本の安全保障だけにとどまらず東アジア全体の安全保障にも及ぶことになる。

そうした点を全く無視して、「グアム協定をいったん破棄して、撤去という形にすればいいのだ」などと、さも簡単にできる話であるかの如く取り繕い、無責任極まりない言動を弄ぶのが、「海兵隊抑止力無効」論者の特徴だといえるでしょう。

普天間基地を「移設」ではなく「廃止」しても日米同盟に影響したり、抑止力が低下しないと主張している「海兵隊抑止力無効」論者は、次のような傾向が強い。

一つは、海兵隊が「抑止力」でないと思っている人たち。
海兵隊の軍事的役割が日本防衛用でないことだけを以って、海兵隊が現在の沖縄に必要ないと単純に思い込んでいる。
この人たちは、東アジアの安全保障とか無関心で、日本だけ安全であればよいというひとりよがりで視野狭窄の傾向が強い。

もう一つは、反米感情から米軍を追い出し、あわよくば日米同盟を破棄したいと画策している人たち。
最初から日米同盟を毀損しようと思っていながら、単なる一つの基地を廃止するだけの話に過ぎないと吹聴する。
これは確信的にやっているので、非常に悪質かつ姑息なやり方だと思います。

いずれにしても、「海兵隊抑止力無効」論を唱える連中は都合の良いことしか言わず、無責任な発言に終始する場合が殆どだと思います。


2.中国の脅威について

最近の中国海軍の活動状況や東シナ海における一方的なガス田資源開発などの行動を見ると、ますます活発になることは容易に想像できます。
中国の進出の仕方は、南沙諸島などの例をみてもわかるように、力の空白地域が生じれば進出し、一方的かつ強引に自国領土に編入してしまう。

そのやり方は、漁船や調査船というように、軍事力を表に出さない形で既成事実を作り、相手の反応を窺いながら徐々に支配を強化していくというこそ泥のようなやり方です。

ゲーム理論の中に、「他方が理性的であり、他方が強欲であれば、1つのアイスクリーム・ケーキを強欲の方は99%以上、食べる事が出来る。」という話がありますが、東シナ海のガス田開発を見ても、このゲーム理論どおりの展開となっています。

これに対応するには、力の空白地域を生み出さないよう努めるしかありません。

要するに日米同盟がゴタゴタしているとか、海兵隊を撤退させるなどという事態は絶対に避けなければいけないということです。
むしろ、中国の進出活動に備え、積極的に南西方面の防衛力強化を図らなければならない事態といってよいと思います。


3.軍事力を単なる迷惑施設としか受け取れない国民性

確かに基地周辺での騒音問題は迷惑施設そのものですし、年がら年中そうした苦痛を受けている住民の身になれば、そう思うのは当然であってそれを他者が云々言うことは出来ません。

しかしながら、そうはいっても安全保障の問題と、迷惑施設の問題を同列に扱うことはあってはなりません。
一般市民はそれで仕方ないかもしれない。

しかし、一般市民ならぬ首相や防衛相までが、臆面もなく迷惑施設と言ってのけるセンスのなさは救いがたいものがありますし、これこそ安全保障の重要さをまるでわかっていない証左でしょう。

この程度の認識しか持たない人間が、一国の安全保障を左右できる地位にいること。
これこそ本当に恐ろしいことです。

民主党は「国民目線で」政治を行うといっていますが、こと安全保障に関しては絶対に間違っていますね。

でも、岸田秀の「どんな国家でも、その国民一般の平均水準以上の指導者を持つことはできないんですよ」という指摘を鑑みてみると、安全保障の問題を軽視する「国民性」そのものが問われているような気もする…。

「安全と水をタダだと思っている」意識は、一回アメリカに占領されたぐらいでは抜けないのかもしれないなぁ…と思う今日この頃です。

それはさておき、そもそも迷惑施設と言われて、血と汗を実際に流しているアメリカ軍人はどう思うでしょうか?
そうした配慮すら欠けるのは、安全保障に対する認識の欠如もさりながら、ひとりよがり状態に陥っているからとしか思えない。
ひとりよがりになってしまうのも、主観と客観の区別がついていないからでしょうが、大の大人がそれでは、幼稚と言わざるを得ないものがあります。

とまあ、非常に雑駁ですが、抑止力論争に関わる分析についてはここまでにしておきましょう。
次回は、今後どうすべきかと言うことについて、考えて行きたいと思います。
ではまた。


【関連記事】
◆鬱屈する反米感情をコントロールしないと危ない。
◆平和主義の欺瞞【その3】~現実を直視しなければ不可逆的に失敗する~





FC2ブログランキングにコソーリと参加中!

「ポチっとな」プリーズ!
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:軍事・平和 - ジャンル:政治・経済

このページのトップへ

コメント

ダイスさんへ

ダイスさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

>彼らは、大東亜戦争の開戦はもちろん、その敗北から、何も学んでいない、当然反省なんかしていないからです。

仰るとおりですね。
先の大戦の敗因は、現実を把握できなかったことでした。
それをキチンと反省していれば、あのような妄想は沸いてでてこないはずです。

抑止力無効論のような妄想が一定の層に受け入れられるのも、戦後60年以上経って、過去の痛い目も歴史の彼方の話になりつつあることのあらわれかも知れません。

  • 2010/05/31(月) 00:35:08 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

 「超左翼おじさん」でのやり取りは、私も拝見していました。
 安全保障を語る相手として見ると、サヨクとの対話に得るものは何も無いですね。でも、ほおっておくと電波垂れ流しだし、誰かが相手をしなければならないのでしょうね… 一知半解さんにおかれましては、「お疲れ様でした」の一語につきます。
 一応、サヨクとの対話に得るものが無い、とする理由を明らかにします。
 彼らは、大東亜戦争の開戦はもちろん、その敗北から、何も学んでいない、当然反省なんかしていないからです。
 一例は、安全保障について考えるとき、相手の意思をあれこれ推測して自説の正当性を主張しますが、けっして「相手は何ができるのか」を考えはしません。(相手の意思を推測する事が常に不適当なわけではありませんけどね。)
 相手の意思ではなく能力を基準して対応策を準備する。これができなかったのが、戦前日本の失敗の一つだと考えています。
 サヨクは憲法9条という「能力を問題視」した法律を金科玉条にしているのですから、安全保障を考えるとき、相手の能力に応じた対策を提示しなければ、アンフェアです。
 自衛隊や日本を非難するときだけ、その能力を問題視する二重基準には、すでに「呆」の域でしかありません。
 まぁ、日韓併合の評価をするにあたって「朝鮮人の言い分だけを聞けばよい」なんて得意げに(自分では正義だと信じて)発言しちゃうレベルなんだからしょうがないですけどね。

  • 2010/05/30(日) 00:41:14 |
  • URL |
  • ダイス #vIABNzxU
  • [編集]

仮)山田さん、Saizwongさん、うたのすけさんへ

コメントありがとうございます。

>仮)山田二郎さん

仰るように価値はないとは思いますが、ああいう一見もっともらしい言説は、キチンと反論しておかないと受け入れられてしまう恐れがありますからね。
お花畑の人たちだけなら構いませんが(笑)。

> Saizwongさん

初めまして。よろしくどうぞ。
某所でのご意見は私も頷くことが多かったです。

ちょっとレベルが低くて恥ずかしい限りですが、あんな程度の議論でもどこか参考になれば幸いです。

それはそうと、つねづね左翼というのは、権利ばかり主張して、義務については知らん振りという傾向が強いと感じてましたので、彼らと議論する際は、義務について問い質すことにしています。
言いっぱなしというのは、有害な言動ですから、キチンと反論することは重要だと思っています。

>うたのすけさん

本当に不思議ですね。
でも、やっぱり我々日本人の程度を表しているのでしょう。自らを鏡に写して、罵っているようなものかもしれません。

  • 2010/05/29(土) 23:10:36 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

鳩山氏抑止力を知る

ほんとうに変わった人である鳩山氏の最近の動きは、戦後、国家意識の欠如した日本人を、さらに「友愛精神」でもって、欠如の正当性を煽りましたね。
どうしても不思議なのは、あのような人が首相になったという事実です・・・。
民主党議員が不思議。
日本人全体が・・・・。

  • 2010/05/29(土) 17:44:34 |
  • URL |
  • うたのすけ #J8bl0gKU
  • [編集]

思想を語る前に

はじめまして。
某所でのやり取りは拝見させていただきました。

まず、「グアム協定」にしたってちゃんと読めと彼らに私はまず言いたいですねぇ。
内容はまさに現行案の履行を前提とした再編計画の一端なのですが、その文章の一部を都合よく切り取って「海兵隊だけ移動するのもあり」といった解釈を行うというのは意図的だとすれば非常に悪質だし、知能が足りなくてそうなるなら救いようが無い。

そんな彼らが日米同盟への影響や軍事プレゼンス、地政学の話をして聞くかといえば・・・まぁ、ないでしょうなぁ。

コメントの返し方も曲解して自分が正当であるかのような印象付けを行う。そのテクニックだけは上手いと思いましたが、そんな表面上だけ取り繕ってどうしたいんでしょうねぇ・・・。

一知半解氏も相手をするのは大変だったと思いますが、書いているコメントや返し方は非常に参考になりました。ありがとうございます。

そもそも、

抑止力=防衛力と捉えてしまっている点で、あの手の人達の意見を聞く価値は全くないでしょうね。
それに9条がある限り、自衛隊=防衛担当、米軍=攻撃担当とする日米安保の体制は、嫌でも堅持せざるを得ないのですから。

  • 2010/05/29(土) 00:05:30 |
  • URL |
  • 仮)山田二郎 #JalddpaA
  • [編集]

KYさんへ

KYさん、コメントありがとうございます。

週刊オブイェクトさんの記事は拝見しました。
私もまったく同感です。

「超左翼おじさんの挑戦」でキンピーさんと散々議論したのですが、彼らは海兵隊が日本防衛用じゃないとか、軍事力として防衛の用をなさないとか、勝手に決め付けて、だからいらないのだと繰り返すばかり。

相手がどう受け取るかであって、あんたが決めることではないと指摘しても取り合ってもらえませんでした。

左翼と言うのは、ホント自己中で、相手が自分と同じように考えるはずだという思い込みがひどい。
ひとりよがりな主張になってしまうのも、当然ですね。

>軍事知識が皆無ゆえに無意識に中国を利する行動を取っているのではないのでしょうか?

軍事知識の無さもあるとは思いますが、そもそも現状認識能力も皆無ですね。

理想に捉われ、現実を正しく把握できない。
いくら理想を掲げようが、現実を把握できねば、単なる妄想家に過ぎません。

彼らのような人間が、政治を主導するようになったら日本もオシマイです。
というか、もう主導してますが…orz

  • 2010/05/28(金) 23:08:34 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

「週刊オブイェクト」に

 「中国軍の要人が沖縄の海兵隊の抑止力を認めている」という記事が載っていました。
 中国は東シナ海におけるパワーゲームの一方の当事者なので当然と言えば当然なのですが、もう一方の当事国である我が日本の政治家やマスコミにその意識が皆無に近いと言うのは余りにも不健全すぎます。事実イェクトで紹介された記事を配信したマスコミは皆無に近いらしく、ますますもって嘆かわしいです。
 沖縄の米軍基地の地政学的意味を知る政治家なら安易に県外、国外移転なんて言い出さないでしょう。未だにテニアン、テニアンと繰り返している「B52少子化担当大臣」や大阪に訓練施設を移転、と抜かしている府知事なんていい海外の笑い者ですね。
 ひょっとして彼らは意識して沖縄の軍事力を中国の為に減らそうと考えているのではなくて、軍事知識が皆無ゆえに無意識に中国を利する行動を取っているのではないのでしょうか?

  • 2010/05/27(木) 23:11:25 |
  • URL |
  • KY #mQop/nM.
  • [編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://yamamoto8hei.blog37.fc2.com/tb.php/334-3aac0266
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

一知半解

Author:一知半解
「一知半解知らずに劣れり」な自分ではありますが、「物言わぬは腹ふくるるわざなり」…と、かの兼好法師も仰っておりますので、ワタクシもブログでコソーリとモノ申します。
一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
日々のツイートを集めた別館「一知半解なれども一筆言上」~半可通のひとり言~↓もよろしゅう。

http://yamamoto7hei.blog.fc2.com/

★★コメント欄運営方針★★
・基本的にどんなコメント(管理人批判も含め)でも一度は公開します。
・事前承認制ではありませんので、投稿するとすぐ表示されてしまいます。投稿前に、内容の再確認をお願いします。
・エロコメント及び勧誘サイトへ誘導するようなコメントは気付き次第、削除します。
・管理人宛てのコメントには、出来る限り対応していきたいと思います。ただ、あまりにも多連投コメント及び悪質・粘質なコメントは放置する場合があります。
・管理人はコメント欄の運営については自由放任という立場です。当面は、たとえ議論が荒れてしまっても不介入の方針でいきます。議論はとことんやっていただいてかまいませんが、できるだけ節度やマナーを保って議論していただきたいと”切に”希望します。
・本人よりコメント削除要求があり、管理人から見て、明らかに事実無根の中傷・名誉毀損と判断した場合は警告の上、当該コメントを削除することがあります。

FC2ブログランキングにコソーリ参加中
「ポチっとな!」please!

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

カレンダー

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

FC2カウンター

QRコード

QR

一知半解宛メール箱

私、一知半解まで個人的にメールを送りたい方はこちらのメールフォームをご利用ください。

名前:
メール:
件名:
本文:

バロメーター

Twitter on FC2

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する