一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

「抑止力」論争を見て【その2】~日本の立ち位置~

以前の記事『「抑止力」論争を見て【その1】』の続き。
前回、「海兵隊抑止力無効」論者による普天間基地を「撤去」すべきとの主張が、単なる一基地の廃止にとどまる問題ではないことを指摘しましたが、今回は引き続き、今後どう考え、対処していくべきか考えていきたいと思います。

そのためにも、まず、日本の立場と役割を正しく認識することが真っ先に必要になります。
そもそも日本の置かれた立場や役割を正しく把握することなくして、正しい対策を講じることは出来ないからですね。
要は「敵を知り、己を知れば…」というやつです。

「海兵隊抑止力無効」論者には、情緒的反米という感情に捉われ、ひとりよがりで自己中な言動が目立ちますが、そうなってしまうのも、日本の立場・役割に対する正しい認識が全くないからか、若しくは1+1=2というような自明な事柄ですら、感情に左右されて理解しようとしないから…のいずれかだと私は分析しています。

それでは日本の立場とは一体如何なるものなのか。
簡単に箇条書きしてみますと…

●世界でも有数の対外債権国家(要するに金満国家)
  ↓
世界中から妬まれる立場にいるということ。
今のところアメリカと組んでいるので安全ですが、立場が悪くなれば、すぐに強請タカリの対象になるってことです


●エネルギーや資源、食糧の大半を輸入に頼る国家
  ↓
ライフラインを遮断されればお手上げということです。

●自由貿易体制における貿易立国として勝ち組
  ↓
自由貿易体制が崩壊すれば真っ先に困るという立場だということです。

●世界の主要国としては、物凄く防衛コストが低い(GDP比1%以下)
  ↓
「義務を負担せず、カネばかりもうけている」と世界中から思われているわけです。

●隣国に失地回復願望が強い中国がある
  ↓
中国のナショナリズムの標的ということ。
中国の理性には期待できないということでもある。


ざっと思いつくまま挙げてみましたけど、これだけ見ても日本の立場って実に脆弱だと思いませんか?

こうした現実を正しく把握しようとせず、「日米同盟がアメリカに利するばかりだ」とか、「日米同盟が日本の防衛に役に立たない」などと、自分勝手な寝言を唱えているのがいわゆる「海兵隊抑止力無効」論者なのです。

反米感情に流されて、そうした現実を見たくないのかも知れませんが、そういう人たちの主張が、仮に通ってしまったとしたら間違いなく日本の安全は脅かされ、現在の繁栄を保つことはできないでしょう。

現在の日本の立場は、その世界における異端でありながら繁栄を極めたという点で、ローマ帝国時代の古代ユダヤと非常に良く似ています。
そこで、過去記事↓でも紹介したことがありますが、山本七平がその類似性について指摘した部分を改めて引用紹介していきましょう。

◆”ひとりよがり”がユダヤを破滅させた。翻って日本はどうか?
http://yamamoto8hei.blog37.fc2.com/blog-entry-264.html

一つの教訓・ユダヤの興亡一つの教訓・ユダヤの興亡
(1987/11)
山本 七平

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(~前略)

ユダヤ人とギリシア人の争いは一転して、ユダヤ人対ローマ帝国の戦いとなったわけである。
なぜ、こうなったのか。

それはユダヤ人が富と特権をもち、これを当然の「権利」としてきたことへの反動があったであろう。

彼らはローマの市民権をもっても兵役を免除され、それでいながらパクス・ロマーナと広大で平和な市場を享受し、ユダヤの律法通りの自治を許され、富を蓄積してきた。

そのことへの反感、さらにギリシア・ローマ文明の優越性を認めようとしないこと、これが傲慢と感じられたのであろう。

◆ユダヤ人より上まわる現代日本人への反感

それは戦後の日本と一脈通ずるところがある

彼らが「カエサルの与えた特権」をもつように、日本人は「マッカーサーの与えた憲法」により軍備の重荷はなく、パクス・アメリカーナの維持にこの面で何一つ寄与せぬとされつつ、これを市場として百パーセント活用して富を蓄積してきた

そして日本人はそれを当然のこととし、高らかに平和論を口にしつつ、この面のアメリカの努力には全く敬意を払わず、むしろ批判し非難しつづけてきた。

そして自らの独自の生き方を当然とするだけでなく、それが欧米よりはるかに勝ると信じ、勝るがゆえに今日の富強を招来したと信じて疑わなかった。

そして、確かにそれは一面では正しい。

それをしていれば、「お前たちは貸す者となっても借りる者とはならないであろう」という旧約聖書の『申命記』の言葉は確かに日本にもあてはまる。

だが、それがどれだけ大きな反感になるか。

現代の日本人への反感が、かつてのユダヤ人へのそれを上まわっていることには多くの例証がある。

かつてある国際会議で、天谷直弘氏が、「ソビエトヘの防衛が問題になっているが、各国の自国産業の防衛が自由貿易体制を崩壊させようとしている、この”防衛”も問題とすべきだ」と述べた。

それに対して「GNPの一パーセントも自由世界の防衛に負担しようとしない日本があのようなことをいっている」といった趣旨の返答があり、同時に満場われんばかりの拍手になって、その雰囲気に異常なものを感じたという。

義務を負担せず、カネばかりもうけている

これが二千年間つづいた反ユダヤ感情の一つであり、それは実にローマ時代にはじまっている。

ラッセル・ブラッドンの『日本人への警鐘』のように、警鐘を鳴らしている者もいるのだが、それは日本人の耳に入らない。

ユダヤ人にもう少し協調性があれば、あのようにはならなかったであろうというユダヤ人が今ではいる。

だが律法絶対、憲法絶対という絶対主義はつねに、人をある世界の中に心理的に閉じこめて一人よがりにするために、そのような協調性はもち得ない状態に陥れるのである。

彼らはそれで破滅した

他山の石とすべきであろう。

【引用元:ユダヤを破滅させた”ひとりよがり”の教訓/一つの教訓・ユダヤの興亡/P260~】


この山本七平著「一つの教訓・ユダヤの興亡」を読んでいただければわかることですが、戦前の日本が太平洋戦争に突入していった過程と、古代ユダヤ王国がローマ帝国に滅ぼされる過程には、極めて似通ったものがあります。

歴史を学ぶ意義というのは、過去の事例から教訓を得ることのはずですが、いわゆる「海兵隊抑止力無効」論者に見られるような”ひとりよがり”な人間にはそれがわからないようです。

そういう人間ほど、戦争責任とか反省やらを口にする。
その反省というのも、「戦争は悲惨で怖いから二度としてはいけない」というような、過去の痛い体験を語ることばかり。
まさに「羹に懲りて膾を吹く」ような行為に過ぎません。

賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」とはビスマルクの言葉ですが、こうした人間の言動を見るとまさにそのとおり…と思わざるをえない今日この頃です。

次回は、今後の日米同盟のあり方について考えてみたいと思います。
ではまた。



【関連記事】
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