一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

靖国参拝問題再考/~二種類の価値観に引き裂かれる日本人~

1読者さんからいただいたコメントを読んで、靖国参拝問題について考える際に何が問題なのか、 私なりに改めて再考してみることしました。

1読者さんがご紹介いただいた麻生元首相の主張にあるように、靖国神社は、軍国主義の象徴などではなく、あくまでも慰霊の場所であることを日本人の誰もが、まず認識すべきであるのが非常に重要です。

しかしながら、この基本認識すら日本人の間では共有されているとは言い難いのが現状でしょう。

なぜそうなってしまったのか?

それは日本人自らが当然の如く従っている文化的伝統的価値観(ここでは死生観)について、自覚したことがなく、他国のそれと比べて相対化して把握し直してみたことがないからではないでしょうか。

靖国神社をまるで「軍国主義の象徴」の如く考えている日本人が見受けられますが、彼等は靖国神社がそもそも国を守るために命を落とした犠牲者を慰霊する為の施設であることを理解していません。
若しくは理解しようとしません。
もちろん、それを認めることは彼等の主張にとって都合が悪いからなのですが…。

ただ、ひたすら戦争を賛美し、人びとを戦争に駆り立てる装置であるように決め付けています。
決め付けた上で、それを排除すれば戦争を防ぐことが出来ると思い込んでいるようです。
あまりに短絡的かつ靖国神社の成り立ちについて無理解であるということが出来ると思います。

「死ねば仏(ここでは仏ですが神と言い換えても良い)」というように、日本人は、例え罪人であろうが悪人であろうが、分け隔てなく祀るのが、日本人の考える慰霊です。

この考えから敷衍すれば、例えA級戦犯であっても、昭和殉難者として靖国神社に祀られることは至極当然のことです。

しかし、そう考えない日本人がいます。
戦争犯罪人であるA級戦犯を合祀することは、先の戦争を肯定する行為で、反省していない証であると考えているのです。

しかし、この考え方は、非常に非日本的で、むしろ、南宋時代の宰相であった秦檜wiki参照)のように死後も唾を吐きかけるのを当然とする”中国的価値観”に似通っていると云うべきでしょう。
唾を吐きかけられる秦檜夫妻の像
(上記写真は、wikiより引用)

死者に鞭打ってまで悪を糾し続ける中国人のメンタリティから言えば、反省とはこれ以外にはありません。
死者に鞭打ち続けることが即ち中国流の「反省」なのです。

しかし、この考えは、前述の「死ねば仏」という日本人の伝統的価値観とは、到底相容れるものではありません。
私が靖国参拝に反対する日本人に、非常に違和感を感じるのはまさにこの点です。
とても日本人らしくないのです。

むろん、そうした考えで批難する日本人がいても不思議ではありません。
しかしながら、普段は自らも日本の伝統的価値観に従って行動していながら、靖国参拝の時だけ(つまり政治問題化した時だけ)、死者に鞭打つという中国的価値観を基に批判を展開するのであれば、節操のない単なるオポチュニスト(機会主義者)に他ならないのではないでしょうか。

そしてまた、靖国参拝を批判する際、A級戦犯だから…という基準で判断するならば、戦勝国のモノさし(判断基準)に則ってしか、物事を判定出来ない受動的・他律的な人間であるということでもあります。

このように他国のモノサシに事大した日本人が、靖国参拝を支持する日本人のことを、一方的に軍国主義者扱いし、反省が足りないと断じ、居丈高に糾弾する。

これこそ、事大主義に基づく「卑屈」というべき行為に他なりません。
これこそ、日頃彼らが批難してやまない「アメリカの犬」そのものの行動ではありませんか!

余談になりますが、なぜかそうした人間ほど、普段は米国に従属していることを嘆いているのをしばしば見かけますが、これほど滑稽なことはありません。
これは、事大主義者が今仕えている事大先が気にいらなくて文句を言っているだけの行為にしか見えませんね。
こうした人間によって、自立するということはありえません。あらたな従属先に事大するのがオチです。
ですから、こうした人間の自立論というものを私はまったく信用していません。

それはさておき、靖国参拝を批判する日本人というのは、自らが普段従っている文化的伝統的価値観を無視し、この問題の時だけ、死者に鞭打つという中国的価値観や戦勝国史観(東京裁判史観)に基づいて行動しているわけですが、そうなってしまった背景には、冒頭で指摘した、自らが従っている伝統的文化的価値観を自覚せず、ないがしろにしているからではないかと思うのです。

なぜ、そうなってしまったのかといえば、やはり敗戦による影響が一因でしょう。
明治時代に江戸時代を暗黒視したように、敗戦後は戦前を暗黒視してきました。

しかしながら、そうした敗戦のショックを経ても、日本人の死生観についてはそれほど変わっていないと思います。

ただ、モノサシ(価値観)ががらりと変わってしまいました。
戦後65年経っても、いまだに東京裁判史観に染まり、戦犯は死後も戦犯として扱うのが当然だというような思考が蔓延しています。

靖国参拝問題を考える際、こうしたモノサシ(価値観)の違いが混在し、それが故に混乱をきたしている、ということをまず把握する必要があります。

要するに日本人は、日本の伝統的価値観vs中国的価値観/東京裁判史観との狭間で引き裂かれているのです。
これを認識しないまま、この問題を論じることは日本人同士の間で不毛な結果しか生みません。

まず、靖国参拝について反対する人たちは、少なくとも自らがどのようなモノサシ(価値観)に立脚して批判しているかを自覚すべきでしょう。
自らが、他国のモノサシに盲目的に従い、どれだけ卑屈に振舞っているのか、気付いていただきたいと思う次第です。

そして、この問題を解決していくには、そうした価値観の違いを地道に説明し、中韓の「靖国参拝=軍国主義」との”一方的誤解”を解いていく努力をすべきなのではないでしょうか。

前回の記事『靖国参拝問題についての「つぶやき」』ではかなり私も感情的に書いてしまいましたが、よくよく考えると、ただ単に相手を罵るだけでは、解決できない問題だと思うのです。

靖国参拝に反対する日本人に対しては、都合よくモノサシを使い分けることの愚と、それに基づく行為が卑屈であることを指摘し、かつ、中韓に対しては、価値観の相違による誤解であることを丁寧に説明していくほかにないのではないでしょうか。

何はともあれ、靖国参拝を政治問題化させないことです。
それこそが地下に眠る英霊に報いる唯一の道だと思います。


【関連記事】
◆靖国参拝問題についての「つぶやき」
◆日本は穢土/自国を貶める人間は、自分が「きれい」であることを証明したいだけ。
◆「私の責任=責任解除」論②「ごめんなさい」と言わない奴が叩かれる日本社会


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テーマ:靖国参拝 - ジャンル:政治・経済

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コメント

デルタさん、1読者さんへ

>デルタさん

室町将軍の「さらし首」というエピソードを教えていただきありがとうございました。

>一見中華帝国の担い手による、蛮行に見える「死者への再度の裁き」も、民族性や宗教によるものというより、「これから確立しようとする王権の強さ」に比例して、現れる現象でないかと思います。

確かにそういった側面があるのは否定できません。
ただ、中国の場合は異民族という問題も絡んできているのでそれが過激になっている点が、日本と異なるかと。

>靖国神社の分祠問題も、同じ視点で見ると、見えてくるものがあるのでは?

しかし、A級戦犯分祀のケースにおいて、その罪を再認識させる意味は、どこにあるのでしょうか。
単なる現状追認のためのような気がしてならないのですが。

>1読者さん

コメントありがとうございます。
tikurinさんの処でのコメント拝見いたしました。

1読者さんのご意見を読んで、靖国神社の成立過程とその背景にあった思想について把握できたような気がいたします。特に大村益次郎と靖国神社との関わりについては非常に勉強になりました。
拝見させていただいて、改めて自らの一知半解ぶりを思い知った次第です。
これからも、ご教授のほど、よろしくお願いいたします。

  • 2010/09/18(土) 23:13:50 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

 一知半解さん、返事が遅れてしまいましたが、このエントリーは、当然読ませて頂きました。

 一知半解さんの意見は、私とは視点や論点への切り込み方が異なっていますが、結論はほぼ一致するのでコメントは見送っていました(厳密には、私の方が過激かもしれませんw)。

 また、まだ続いている「超左翼おじさんの挑戦」のコメント欄での論争も、時々覗かせて頂いていますが、本当に「ご苦労様です」と言うしかありません。

 なお、tikurinさんのご意見に対して、いくつかの補足意見をコメント欄で述べさせて頂きました。
 ご案内させて頂きます。

  • 2010/09/15(水) 22:38:42 |
  • URL |
  • 1読者 #-
  • [編集]

室町将軍の「さらし首」

等持院にある歴代室町将軍の木像が、鴨川の河原にさらし首にされたことがあります。何年のことだったかは忘れましたが、幕末のこと。
一見中華帝国の担い手による、蛮行に見える「死者への再度の裁き」も、民族性や宗教によるものというより、「これから確立しようとする王権の強さ」に比例して、現れる現象でないかと思います。絶対的な集権的な王権を確立するために、イデオロギーが必要となり、そのイデオロギーを確認させるために、「逆賊」の罪を晒す必要がある……私には、そんな風に見えるのです。
靖国神社の分祠問題も、同じ視点で見ると、見えてくるものがあるのでは?
一国平和主義を保つためには、「刀狩り(民衆の武装の徹底禁止)」と「暴力否定」という社会のルールを必要としますが、そのために必要な政府の強権は、明治政府以上の強大な法権力となるはずです。

  • 2010/09/15(水) 00:23:34 |
  • URL |
  • デルタ #JnoDGgPo
  • [編集]

KYさん、花春さんへ

>KYさん

コメントありがとうございます。

>相手が「理性的」ならば説得も楽なのですが、自分たちの考えは絶対無謬で、それを批判する者が間違っていると固く信じているカルト信者や、全て納得ずくで無茶な要求を出している特亜相手ではかなり困難でしょう。

ご指摘のとおりです。
ただ、中国人などは、日本人の死生観など知らないでしょうから、きちんと周知すればある程度は理解は得られるかも。
でも、足を引っ張る確信犯的な日本人がいるのがネックだよなぁ…。

>ましてや国旗・国歌で論点をしょっちゅう摩り替えるようなカメレオンのような御方には不可能に近いでしょうね(冷笑)。

自分の都合に合わせて、その都度、用いる基準を変える人たち(オポチュニスト)というのは、私の経験則上、間違いなく建設的な議論にはなりませんね。
困った人たちです。


>花春さん

コメントありがとうございます。

>理念や信念はもちろん悪意すらなくただ単に「他人から文句(批判)を言われたくないからそれをさけたいという思い」だけしかないような気もします

確かにそういう面もありますよね。
事実、戦後の日本は商売だけを考えて生きてきたようなところがありますから、商売の邪魔となるなら、自らのアイデンティティも否定してしまいがちな面があるように思います。

これも、敗戦による反動の一環で、自らの共同体というものの機能を軽んじているせいでしょうが。

ただ、商売人であっても譲れない部分はわきまえて欲しいなと思います。
謙譲も、度が過ぎると卑屈でしかありませんから。

  • 2010/08/30(月) 22:01:32 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

理念や信念はもちろん悪意すらなくただ単に「他人から文句(批判)を言われたくないからそれをさけたいという思い」だけしかないような気もします

  • 2010/08/30(月) 07:41:47 |
  • URL |
  •  花春 #-
  • [編集]

すっかり忘れていました

 恥ずかしながら、靖国神社が本来「国のために命を落とした犠牲者を祀る所」と言うことを今まで忘れていました。そうなると、靖国が「軍国主義の象徴」というのはヤクザのインネンレベルですらない、と言うことになります。でも知っていて難癖をつけるのがサヨクなのでしょうね。全くヤクザと変わらない連中です。ましてや「善悪を超えて死者を弔う」のが日本人の死生観と言うのは彼らも自覚しているでしょうに、敗戦の日になると途端に旧戦勝国の価値観に豹変してしまうのはまさにポチ以外の何物でもありません。尤も普段は反米を装っていても、心の奥底ではアメリカ様様べったりの奴隷根性に毒されているのがサヨクですが(苦笑)。
 >ただ単に相手を罵るだけでは

 相手が「理性的」ならば説得も楽なのですが、自分たちの考えは絶対無謬で、それを批判する者が間違っていると固く信じているカルト信者や、全て納得ずくで無茶な要求を出している特亜相手ではかなり困難でしょう。
 ましてや国旗・国歌で論点をしょっちゅう摩り替えるようなカメレオンのような御方には不可能に近いでしょうね(冷笑)。

  • 2010/08/29(日) 22:06:53 |
  • URL |
  • KY #m1TSshwM
  • [編集]

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「一知半解知らずに劣れり」な自分ではありますが、「物言わぬは腹ふくるるわざなり」…と、かの兼好法師も仰っておりますので、ワタクシもブログでコソーリとモノ申します。
一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
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