一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

尖閣デモ報道に思う/~日本のマスコミは報道機関ではなく「宣撫」機関~

ええと、もうだいぶ前の話題になってしまいましたが、たしか10月2日に最初の尖閣デモがありましたよね。
その後のマスコミ報道に注視していたのですが、そのデモをまったく報じない大手マスコミ(全国紙・主要テレビ局)の姿勢には、(予期はしていたものの)ちょっとショックを覚えました。
第2回目の尖閣デモ(10月18日)の時にも、1面で取り上げたのは産経新聞(しかも、デモ参加者人数が水増しならぬ間引きされ矮小化されていた)だけだったみたいです。

こういう状況をみると、改めて日本には、「報道の自由」が存在しないこと。及び、日本のマスコミが報道機関ではなく「宣撫機関」である事を痛感した次第です。

今回の現象は、果して何らかの報道協定があって報道しなかったのか、それとも、マスコミ各々が自主規制した結果、こうなったのか?
素人には何とも判断がつきませんが、いずれにしろ、結果として、大手マスコミが一致する行動を取ったというのは、日本のマスコミが持つ一つの大きな特徴、「附和雷同性」というものを浮き彫りにしたと思います。

そんなマスコミの附和雷同性について、先日不帰の人となった小室直樹の言葉をちょっと紹介しておきましょう。

「派閥」の研究 (文春文庫)「派閥」の研究 (文春文庫)
(1989/09)
山本 七平

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(~前略)

日本のマスコミほど、デモクラシー諸国のマスコミからほど違いものはあり得ないからである。
日本のマスコミの附和雷同性は世界に冠たるところ

全体主義国家だって及びもつかない。
かの中国報道についてはまだ記憶している人もあろう。

日本のマスコミはよく、『世論はこうだ』『世論によれば……』なんていう。
しかしこれぞ、デモクラシー国家においてあり得べからざる表現である。

このことを真に理解するためにクイズをひとつ。
『世論』を英訳してごらんなさい。

The public opinion
いや、これは全体主義国家です。
日本人はたいがい、こう思いこんでいるからこそ、右のような表現が出来るのです。

デモクラシー諸国における世論は、常に複数 public opinionsでなければならない。
大賛成から大反対まで、さまざまなヴァリエーションがあり、どの少数意見も尊重されなければならない。
それゆえ、『世論はこうだ』という表現はあり得ないのである。

(後略~)

【引用元:「派閥」の研究/納得治国家・日本/P55】


上記記述を一つ読んでみても、昔から中国報道については、マスコミの自主規制というのが働いていたということがよくわかりますね。
ネットが普及した現在、今回のように「マスコミの自主規制」が露わになったことは、国民がマスコミの洗脳から逃れる良いキッカケになったと思います。

ところで、小室直樹が指摘しているマスコミの「附和雷同性」と日本人が『世論はこうだ』という”思い込み”には、少なからず関連があるのではないでしょうか。
よく考えてみる必要がありそうです。

それはさておき、今回の一件で、もう一つ考えられるのが、今回の”現象”には、日本のマスコミが本質的に持つ「宣撫」体質が関係しているのでは…という事です。

山本七平が「ある異常体験者の偏見」の中で、「戦前戦後を通じて日本のマスコミほど優秀な宣撫機関はない」と指摘しているのですが、果たしてこのことに気付いている日本人はどれだけいるのでしょうか?
そこで今日は該当部分を以下、抜粋引用して紹介していきます。


ある異常体験者の偏見 (文春文庫)ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
(1988/08)
山本 七平

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(~前略)

言うまでもなく民主主義の原則は言論の自由である。
そして言論の自由の前提は、多種多様な視点からするさまざまな情報の提供である。

マック(註1)この根本を完全に抑えた
(註1)…GHQ最高司令官マッカーサー(wiki参照)の略称。

戦争直後人びとは言論が自由になったように思い、戦争中のうっぷんを一気に吐き出すことを、言論の自由と錯覚していた。

しかしその背後には、情報の徹底的統制と直接間接の誘導・暗示、報道・論説という形の指示があり、人びとは、それを基本にして声を出しているにすぎなかった

そういう形の言論の自由なら、どこの占領地にもあっただけでなく、大いに奨励された。
これが宣撫工作である。

この方法を言語論から見て行くと非常に興味深い。
パウル=ロナイ教授が『バベルヘの挑戦』の中で、言葉には「伝達能力」があると同時に「隠蔽能力」があることを指摘している。

あることを知らせないために百万言を語る(これも宣撫工作の原則の一つだが)という最近の一例をあげれば「林彪事件(註2)」の報道であろう。
(註2)…1971年9月13日に発生した中華人民共和国の林彪中国共産党副主席による、毛沢東主席暗殺未遂事件及びクーデター未遂、その後の亡命未遂事件のこと。(wiki参照

すなわち「林彪事件の真相」を知らせないために多くの報道がなされた。

これは少しも珍しいことでなく、戦争中もプレスコード(註3)時代も絶えず行われていたことで、現在では外電との対比が可能で外国の新聞も買えるから、その報道の真実性に人びとが疑問をもつだけで、情報源を限定してしまえば、「報道することによって、事実を隠蔽する」ことは、実に簡単にできるのである。
(註3)…大東亜戦争後の連合国軍占領下の日本において、連合国軍最高司令官総司令部(以下GHQ)によって行われた、書物、新聞などを統制するために発せられた規則。これにより検閲が実行された。(wiki参照

従って情報の根元を統一して一定の枠を設け、その中で「言論」を自由にしておくということは、プレスコードというマックの網とタイコの下で「自由」に動いている猿まわしの猿と同じ状態にすぎないわけである。

(~中略~)

プレスコードによって情報源を統制してしまえば、あとは放っておいて「自由」に議論させればよい。
そしてその議論を誘導して宣撫工作を進めればよいわけである。

この点日本の新聞はすでに長い間実質的には「大日本帝国陸海軍・内地宣撫班」(と兵士たちは呼んだ)として、毛沢東が期待したような民衆の反戦蜂起を一度も起させなかったという立派な実績をもっており、宣撫能力はすでに実証ずみであった。

これさえマック宣撫班に改編しておけば、占領軍に対する抵抗運動など起るはずはない、と彼は信じていた。

これは私の想像ではない。
私にはっきりそう明言した米将校がいる
そしてそれはまさに、その通りになった

「史上最も成功した占領政策」という言葉は、非常な皮肉であり、同時にそれは、その体制がマックが来る以前から日本にあり、彼はそれにうまくのっかったことを示している。

(~中略~)

新聞は新しい「権力」だなどといわれるが、「新しい」は誤りで、戦争中から、最高の権力者であった

プレスコードで統制された新聞とは、連合軍最高司令官の機関紙に等しいから、これを批判することは「占領政策批判」であり、そういうことをする者は、抹殺さるべき「好ましからぬ人物」であった。

(~中略~)

そして人びとは、言論の自由があると錯覚させられており、プレスコードの存在すら知らないままでいた。

(後略~)

【引用元:ある異常体験者の偏見/洗脳された日本原住民/P224~】


上記の引用部分を読むと、日本の”宣撫機関”を見事に活用したGHQの宣撫工作と言うのは実に巧みで、敵ながら天晴れとしか言いようがありませんね。
今ですら、こうしたGHQの宣撫工作のコントロール下にいる人も多そうです。

ここでは、宣撫工作についての山本七平の解説を、だいぶ端折って紹介したのでわかりにくい点もあるかもしれません。
いずれこの宣撫工作について詳しく書かれた「洗脳された日本原住民」の章については、改めて取り上げていきたいと思いますが、とりあえず日本における宣撫の手口については、「荒っぽい言論弾圧ではなかった」という点を、記憶に留めておく必要があると思います。

これを見てわかるように、昔から日本のマスコミは「事実の報道」機関ではなく「宣撫」機関的体質を濃厚に持っているわけですね。
国民に知らせる事、知らせない事を、マスコミが取捨選択して報道する。
国民を信頼せず、宣撫して善導すべき対象としてしか見ていないのです。

昔から日本の最高権力であった故の”傲慢さ”が、そういう態度を取らせているのかも知れません。

でもどうして、国民はそうしたマスコミの「宣撫工作」を受け入れてしまうのでしょうか。
私が思うに、情報を受け取る国民の側に根強くある「公平中立純客観的な報道が存在する筈だ」という”思い込み”が作用しているからではないでしょうか。

「人は偏り見るもの」という前提を持っていないから、公平中立を謳い装うマスコミの主張を無批判に受け入れてしまう。
若しくは、マスコミの主張が偏っているのではと感じつつも、どこかに別の(あるはずもない)公平中立な立場のマスコミがあると信じているからではないでしょうか。

また、過去記事『アントニーの詐術【その6】~編集の詐術~』でも紹介したように、「編集の詐術」について警戒心が薄いことも影響しているのかも知れません。

いろいろと考えて見る必要がありそうですが、その際、ネットというのは非常に手助けになるツールですね。
そう考えると、今後ディジタル・ディバイドをなくしていくことが結構重要になってきそうな気がします。

尖閣デモを巡る報道を見ながら、そんなことをつらつらと考えた次第。
まとまりませんが今日はこの辺で。ではまた。

【関連記事】
◆違和感のある情報を受け付けようとしない「体質」について考える
◆アントニーの詐術【その6】~編集の詐術~


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中国大使館への抗議街宣デモ!尖閣諸島侵略

上記の補足です
チャンネル桜も捏造報道を行いました。
現場にいた方の書き込みを転載します。

http://www.nicovideo.jp/watch/sm12477975

10.16
中国大使館の尖閣諸島デモの現場において
「シナ人きた!」 「シナ人きた!」

と、杉並区議会議員松浦芳子(63)が日本人に対し指を指し叫んでいました。
これは名誉毀損に当たる行為です。

議員バッジを付けた人間が、公衆の面前にて民間人を侮辱するとは、議員としての責任感が伺えません。
職業倫理に欠ける行為です。

更に問題は続きます。
それを鵜呑みにした桜チャンネルが「シナ人の工作員の首謀者!」と全国放送してしまいました。
その上、インターネットで世界中に配信しました。

 NHKの捏造番組を批判す資格があるのか?

チャンネル桜を信じ切っている多くの人間が、この誤報を信用し、更にインターネット上で広めました。

二次災害ですね。
事実とは異なる報道が世界中に配信された訳です
それこそ、報道による暴力行為です。冤罪報道です。
日本人でありながら「シナ人」と」 報道された日本人の方の名誉は回復していません。
訂正放送では結局、紛らわしい事をした本人が悪い! で終わっています。
謝罪は無しです。
事実確認もせず、松浦芳子区議(63)の思い込みをそのまま流すとは、報道機関失格だと思います。
社会的影響力を考えるべきです。
人を 社会的に抹殺しうる事です
現にその方は、この放送が原因で、政党に所属し来年選挙に出る方でしたが、政党を脱党しました。

マスメディアによる人権侵害です。

報道倫理がないです。

事実とは異なる報道を世界中に配信するのは、やめて下さい。
日本の右翼、保守が、頭が悪い!? と思われるような番組をチャンネル桜よ流さないで下さい。

チャンネル桜を支持する人間を裏切るのですか

デルタさんへ

デルタさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

>事後に、しかも遠くに住む人へ「デモを行った」と広範につたえなければならない理由がわからないのです。

うーん、「自己評価の認証」要求とでも言いましょうか。
やっぱりデモというのは世間に対するアピールですから、その反響を確認したいわけです。どんなデモの参加者であれ。

それなのに、少人数のデモは報道して、大人数にも関わらず報道しないとなりゃ、その不公平さに怒るのは当たり前のように思いますけど。

「日本人に対する示威」という解釈よりも、菅民主党政権に対する抗議という意味合いが強いように思います。

今回の尖閣デモを「示威」と見なすには、ちょっとデモの内容がおとなしすぎるように思います。

中国の反日暴動やポーツマス条約を結んだ小村寿太郎が帰国した際(?)のデモ(焼討ち?)のような”暴動”型のデモであれば、「示威」に該当するかも知れませんが…。

  • 2010/11/06(土) 23:45:02 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

デモ‥‥誰に対する示威なのでしょうね

尖閣の問題に対するデモをマスコミが取り上げない、というお話、
なぜ問題なのかが、私にはピンとこないです。
デモは誰に向けてやるものなのでしょうか。本質的には、この種のデモを東京でやるならば、在東京の中国大使館を最終標的にして行うわけですよね。もちろん、その道のりで、沿道の人の問題意識を喚起する狙いもあるでしょうけど、事後に、しかも遠くに住む人へ「デモを行った」と広範につたわえなければならない理由がわからないのです。
いつのまにか、「日本人に対する示威」になっていませんか?劇場型の大衆扇動と言い換えてもいいかな?

  • 2010/11/06(土) 01:20:28 |
  • URL |
  • デルタ #JnoDGgPo
  • [編集]

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「一知半解知らずに劣れり」な自分ではありますが、「物言わぬは腹ふくるるわざなり」…と、かの兼好法師も仰っておりますので、ワタクシもブログでコソーリとモノ申します。
一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
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