一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

今だからこそエネルギー属国である現実を直視せよ!/~原発が果たしてきた歴史的役割とは~

東京電力福島原発事故を巡るニュースが錯綜していて、素人には何がなんだかわからない状況が続いてますね。
やたら危機を煽る人もいれば、事態を過小評価している人もいて、どちらが正しいのか迷ってしまいそうです。

しかしながら、原子炉の型や構造から考えて、少なくともチェルノブイリのような惨事にはならないでしょう。
もちろん、スリーマイル島レベルの事故であることは間違いないので予断を許しませんが。

今回の原発事故で、日本での原子力発電事業の停滞は必至ですが、それでも現存する原発は今回の事故を踏まえ安全対策を講じた上で運用を継続して行くべきでしょう。
何しろ日本の現状において、原子力エネルギーに代わり得る安定的な代替エネルギーが近い将来見込めない以上、リスクを最小限に止めつつ運用し続けるしか選択肢は無いのですから。

放射能の危険性も重大ですが、その危険性について正しい知識を持ってキチンと対策を講じればある程度はその害を防ぐことができる筈です。
しかしながら、原子力発電を止めた場合に蒙る日本経済への悪影響は、放射能の害よりもはるかに大きい。

エネルギーの自立が損なわれることでどうなるかは、ここ数日に行なわれた計画停電での混乱を見れば明らかでしょう。
電力の安定供給は、まさに血液の循環に等しく、循環が止まれば人の生命の維持さえ危うくなるのですから、安定供給の維持は至上命題。

そして安定供給するために必要となる自主エネルギー源を殆ど自活できないのが日本の立場なのです。
過去の日本においてエネルギー不足がどのような影響を与えてきたか、歴史を振り返って考察した山本七平のコラムを一部抜粋してご紹介しておきましょう。(過去記事「◆「原子力の日」に思う。」では全文紹介済みです。)

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■原子力の日

(~前略)

こういう新しいエネルギー(原子力のこと)と、それによって生産される電力が社会で用いられるエネルギーの主体となると、人間の社会はどう変化するであろうか。

過去における戦争は、しばしば食糧とエネルギーをめぐって起こった。

戦前の日本では「石油の一滴は血の一滴」などといわれ、これと食糧とが、世界恐慌の後遺症に苦しむ日本が満州に進出しようとした主要な動機であったといえる。

当時の記録を見ると、開拓民として満州に渡ったのは農村の土地なき二男、三男であり、その多くは寒冷・積雪地である。

今その順位を記すと、①長野、②山形、③宮城、④新潟、⑤福島、⑥群馬、⑦熊本、⑧石川、⑨秋田といった順になっている。

歴史に「もし」はないが、当時日本が豊富なエネルギーをもち、これらの地に工業を興して就業の機会を得られるようにしていたら、満州事変から太平洋戦争へという悲劇を防ぎ得たであろう。

もちろん現在でも問題はすべて解決したわけではなく一方で過密を生じ、その一方で過疎を生ずるという問題は残しているとはいえ、昭和初頭のような苦しい状態ではない。

日本の農地は限られているが、就業人口は減少して多くが第二次、第三次産業に移っている。
それを可能にしたのが豊富なエネルギーであることはいうまでもない。

従ってエネルギーの確保は日本の死命を制する問題であるとともに、その創出は日本の将来に大きな可能性を与える。

と同時に、原子力はある国または地域がエネルギーを独占して国際政治に猛威を振るうことも抑止しているわけであり、原子力はこの点でも「エネルギーなき国」といわれた日本の将来と国際政治に大きな力をもっている。

このような点から見れば、「原子力の日」は日本にとって、新しい方向へと踏み出した重要な日だと言わざるを得ない。
毎年この日には必ず、エネルギーと日本の将来という問題を、各人の問題として考えたいものである。

(終)

【引用元:原子力の日/「常識」の非常識/P88~】


今も被災地においては「石油の一滴は血の一滴」であるのが現実です。
その石油からの依存を減らすのは、残念ながら現状では原子力しか見当たらない。

反原発のヒステリックな論調が高まりつつ現在こそ、上記コラムを鑑みるべきだと私は思うのです。
いたずらに原発の危険性というデメリットばかりに捉われるのではなく、そのメリットも把握した上で、今後の原子力を考えるべきでしょう。

【関連記事】
◆「なるなる論」法からの脱却を目指そう/~日本人の思考を拘束している宿命論~
◆「原子力の日」に思う。
◆資源問題に関する日本人の「現実的」態度は、世界に比べて現実的だろうか?


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テーマ:環境・資源・エネルギー - ジャンル:政治・経済

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コメント

KYさん、YSJournalさんへ

コメントありがとうございます。
レスが大変遅くて申し訳ないです。

>KYさん

>当面の問題は福島の原発の抜けた分の発電量をどうカバーするかですが、それには火力に頼らざるを得ず、石油の確保が一層重要になります。

それなのに、反原発派の連中は、計画停電は東電の策略だとか、原発無くても十分賄えるなどといい加減なデマを吹聴してますね。
ほんと有害な連中ですよ。

しかし、民主党のプール発言もお粗末過ぎます。
もう少し言葉を選ぶことが出来ないのか?とうんざりです。

>YSJournalさん

反原発派の人たちを見ていると、山本七平の「補給低能」だとの日本人評はいまだに的を得ているなぁ…とつくづく思いますね。

まだまだ福島原発も予断を許さないようですから、当分の間、馬鹿踊りが続きそうで嫌になりますね。

失敗を教訓として前進できる能力を日本人は持っているのですから、己を信じて「なるなる論」に捉われないようにしないといけませんね。

  • 2011/03/25(金) 23:04:43 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

失敗を教訓として前進する

一知半解さん、
ご存知の原発嫌いの人達が大騒ぎしてるのを傍目でみながら、馬鹿は死んでも直らないと改めて思っております。この方々は、これで一生話のネタにはこまらないでしょうね。

今回の地震規模のマグチュードまで改竄しているという話で、余りのバカバカしさに、逆に脱力してしまました。

一方で成り行きは非常に心配しております。使用済み燃料プールが中空にあるというは、意表でした。検出されている放射物質をみると部分溶解は間違いないようです。あとは、底が抜けない様に祈るだけです。

事故前に少し情報を仕入れていたので、冷静に報道を見れた事が大きかったと思っております。(アメリカなのも)

改めて、山本七平は鋭いと思う次第です。

  • 2011/03/21(月) 23:58:28 |
  • URL |
  • YSJournal #-
  • [編集]

一知半解さん

 レス有難うございます。
 原発政策の続行は、一時的に規模縮小もありうるかも知れませんが、日本にとっては絶対不可欠でしょう。当面の問題は福島の原発の抜けた分の発電量をどうカバーするかですが、それには火力に頼らざるを得ず、石油の確保が一層重要になります。同時に被災地への燃料ー石油製品のスムーズな調達が当面の課題でしょう。そんな中で「プールにガソリンを貯めておけば良い発言」には唖然としました。政権与党の国対委員長なるものがガソリンと生活用水とごっちゃにしているのですから。消防法以前の問題です。民主党にはこの手の人材?しかいないから原発事故も他の震災被害も対策が後手に回ったのでしょうね。こんな「無能」と言うより「有害」な集団が現政権では、自民政権ですら躊躇してきた尖閣沖の油田・ガス田試掘は尚のこと不可能でしょう。彼らの言う「政治主導」がどんな意味だったかを日本国民が知るにはあまりにも授業料が高くつきすぎました。

  • 2011/03/21(月) 23:34:47 |
  • URL |
  • KY #2Q1Nccu2
  • [編集]

花春さん、KYさんへ

こんばんは。
コメントありがとうございます。

>花春さん

>反原発団体が否定しているのは原発でなく消費社会であるような気もします

そうかもしれません。
しかし、彼らが言う「自然に帰れ」というのは、冷暖房付きの快適な家に住んで衣食が十分にあるという条件付でしょう。それは消費社会でしか実現できないのに、その社会を否定できると妄想している点で、彼らの主張は支離滅裂ですね。

>KYさん

>反原発に固執するあまり素人にも突っ込まれる穴だらけの妄想を平気で口にする様はカルト信者を彷彿とさせます。

彼らの問題の捉え方が、知に基づくものではなく、信に基づいているからでしょうね。
要は信念バカって奴ですね。
だから、どんなに反論されても考えを曲げないし、建設的な解決策を取ることが出来ない。
全ては二者択一的になってしまい、妥協というのが無くなってしまう。
困ったものです。

  • 2011/03/21(月) 23:18:16 |
  • URL |
  • 一知半解 #f2BEFQoE
  • [編集]

以前誰かが

 「原発に頼らずとも既存の火力と水力をフル稼働させれば日本の電力需要はカバー出来る」という与太話をしていたと思いますが、その火力発電が必要とする石油を殆ど輸入に頼っているという事実を無視したお花畑的楽観論にはコーヒーを噴出しそうになりました。水力にしても雨が降らなければ充分な発電も出来ないのに、反原発に固執するあまり素人にも突っ込まれる穴だらけの妄想を平気で口にする様はカルト信者を彷彿とさせます。
 日本が原発に頼らざるを得ないのは地球温暖化防止というまやかしの俗説によるものではなく、エネルギー自給率の向上が最優先の目的だからでしょう。

 >ある国または地域がエネルギーを独占して
 日本が原発を放棄すると、日本のエネルギー自給率が下がって喜ぶ国や組織がいるんでしょうね。これは決して陰謀論で片付けられる問題ではないでしょう。現にまた明日からガソリンが「便乗値上げ」されるのですし。

  • 2011/03/21(月) 12:30:43 |
  • URL |
  • KY #xyze0vVc
  • [編集]

反原発団体が否定しているのは原発でなく消費社会であるような気もします(彼らも消費社会に首まで浸かっているのですが)

  • 2011/03/21(月) 06:48:42 |
  • URL |
  • 花春 #-
  • [編集]

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一知半解なるがゆえに、自らの言葉で恥を晒すのを控え、主に山本七平の言葉を借用しつつ書き綴ってゆきたいと思ふのでアリマス。宜しくメカドック!!
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