一知半解なれども一筆言上

山本七平マンセーブログ。不定期更新。

洗脳された日本原住民【その5】~宣撫の基本型その2/分割統治~

前回の記事『洗脳された日本原住民【その4】~宣撫の基本型その1/対話形式の一方的命令~』の続き。

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(1988/08)
山本 七平

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前回の続き)

結局占領軍の原則とは「占領軍に有利」ということだけであるから、たとえ原則らしいことをロにしても、それが自己に不利ならば、平然と自分の原則を自分で破る

たとえば経済力の集中は排除する、独占は許さんと言っても、軍の移動に必要ならば当時独占企業であった日本通運はそのままにしておく
戦時中の独占的書籍雑誌配給企業である日配(日本出版配給株式会社)は解体しておきながら、単行本の配給機関などとは比較にならぬほど大きな影響力をもつNHKや大新聞は解体せず、自己の宣撫工作のためそのままにしておく

さらに、非武装の新憲法を称揚したかと思えば、東洋のスイスであれと言ってみたり、そうかと思うと警察予備隊をつくれといったり、満州爆撃を主張したり、蒋介石を訪問したり、一見全く無原則である。

しかし「占領軍のために有利」という点から見ると、彼らは、否われわれも同じだったが、それだけが絶対の原則であり、そこでどのような手段を使っても絶対に避けようとすることは、占領軍が徹底的に不利な立場に立たされることである。

そしてその最たるものは占領地のあらゆる不平不満が占領軍に集中して来て、ついには爆発して、両者の正面衝突となり、収拾がつかなくなることである。

ひとたびこれが起れば、アメリカにおけるマックの声望は一瞬にして急落する。
しかしどの社会にも不平不満や利害の衝突は必ずある。

そこで宣撫班は、不平不満はいかなる場合も「原住民の当局に向うよう」誘導しなければならず、また「原住民の政争その他の争いに直接介入してはならないのである。

こうすれば、自分は矢面に立たないですみ、あらゆる不平不満は原住民の政府に向うだけでなく、これは一種の分割統治となるから原住民が結束して占領軍に刃向う心配がなくなるわけである。

従って占領軍はたえず原住民の分裂を策し、また常に野党の立場に立って、原住民を原住民政府に向わせ、そのエネルギーを自己に集中させないようにする。

これは宣撫工作の原則の二である。

実際、このように見てくると、吉田自民党政府へのデモぐらい滑稽なものはあるまい。
これはまさに茶番劇である。

デモを仕掛ける相手があるとすればマック司令部のはずである。
ところが、マックの乗用車がデモ隊に囲まれたといった事件は、ただの一回も起っていない。
事実マックは常に高みの見物だが、占領事は常にそういう行き方をするものであろう。

それはおそらく私でも同じて、比島に米軍が来攻せず、長期占領の不満が爆発した場合、もしそれが占領軍に向わずに、デモ隊がマラカニヤン(大統領府)でも包囲したときけば、おそらくほっとして、見物していたであろう。

だが実際には真に批判さるべきことは日本軍にあった如くに、マック司令部にも批判さるべき多くのことがあった。

スキャピタリスト」という言葉は私が比島の収容所にいる間にすでにあったように思う。

この言葉にはいろいろな意味があったであろうが「スキャップ(連合軍最高司令官)の奴ら」という蔑称もあったと思う。
ついにその醜状をGHQの一女性(?)がニューヨーク・タイムズ(?)に投書した。
正確に憶えていないが、その切抜きを入れた「お国の新聞でも問題になっているでしょうが……」という手紙をある人からもらって、はじめて知ったわけである。

先方はもちろん「日本で問題となっていると思うが、アメリカの新聞も看過しているわけではない」という意味で送って来たのであろう。
これはもちろん日本が民主化されたと信じている善良な一米人の誤解で「当時の新聞=宣撫班文書」にそんなものが載るわけはなかった。

それどころかスキャピタリスト」という言葉の存在すら、だれも知らなかった

そのように宣撫とは、常に本当の問題を隠して、民衆の目を別方向に向けさせるよう、あらゆる情報を統制した上で、あらゆる誘導を行うのである。

(次回へ続く)

【引用元:ある異常体験者の偏見/洗脳された日本原住民/P230~】


しかしまぁ、上記の山本七平の指摘を読むと、マッカーサーってのは実にいい加減な事ばかり言っていたものですなぁ。
そういえば岸田秀も著書「日本がアメリカを赦す日」の中で、マッカーサーの「東洋のスイスたれ」という発言や「新憲法の不戦条項は幣原喜重郎首相が申し出てきたもので、氏の熱意に感激した」という発言を取り上げてウソつきだと指摘していました。これについては過去記事↓で紹介してますので参照されたし。

◆平和主義の欺瞞【その4】~押しつけられた平和主義は平和の敵~

けれども、「占領軍に有利」という原則からみれば、彼の態度は一貫していたわけです。
こんなマッカーサーの発言を真に受けて、彼のやったことが「日本のためだった」と思うなら、占領ボケもいいところでしょう。

それはさておき、宣撫工作の原則2である「分割統治」を大辞林で調べてみました。

■ぶんかつ-とうち【分割統治】
支配者が被支配者の民族・宗教・利害などの相違対立を利用して相互に分立させ、統一的反対勢力の形成を困難にして支配の安定をはかる方法。


要するに英仏が植民地を支配するのに使ったやり方ですね。
おかげで植民地支配を受けた国々では、いまだにこれが原因で紛争が絶えない。

マッカーサーはそれと同じ構図を、戦後日本に植えつけた。
その結果、日本の野党というものは、反政府ではなく「反国家的」性格を帯びることになったわけです。
山本七平はこの問題を別のコラムでも取り上げていますが、過去記事↓で紹介済みですので参照されたし。

◆なぜ日本の野党は「反国家」なのか?~占領軍の検閲が残した影響とは~

今の日本の悲惨な政治状況を見ていると、マッカーサーが植えつけた種が、戦後60年以上経って民主党政権として開花してしまったのかもしれない…と思わざるを得ません。

そう考えると、日本というのは、いまだマック体制のくびきからの脱却が出来ていない感が否めませんね。

ところで、まったくの余談ですが、「スキャピタリスト」という単語をグーグルで完全一致という条件で調べてみたところ、驚いた事に1件しかヒットしませんでした。
それも山本七平の言葉を引用したHPだけでした。

この事実こそ、いかに宣撫工作が上手くいったか、を如実に示しているのではないでしょうか。

さて、次回も宣撫工作の解説部分を紹介してまいります。
ではまた。

【関連記事】
◆洗脳された日本原住民【その1】~宣撫工作に利用された「日本国憲法」~
◆洗脳された日本原住民【その2】~日本人がフィリピン人のように見えた理由とは~
◆洗脳された日本原住民【その3】~プレスコードの下で「自由」に動く猿回しの猿だった日本人~
◆洗脳された日本原住民【その4】~宣撫の基本型その1/対話形式の一方的命令~
◆なぜ日本の野党は「反国家」なのか?~占領軍の検閲が残した影響とは~
◆平和主義の欺瞞【その4】~押しつけられた平和主義は平和の敵~

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